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読書まとめ『共感障害』→障害ではなく、個性だと受け容れて活かす

『共感障害 「話が通じない」の正体』黒川 伊保子


一言で言うと

障害ではなく、個性だと受け容れて活かす



概要

「共感障害」という
パンチ効きすぎな単語が気になって
読んでみました。

思い当たるフシがありすぎましてね。

ここ数年、どうでもいい情報を切り捨てて、
他者の目を気にせず我が道を往く生活を続けていたら、
他者に共感する力がすっかり衰えたと感じています。

職場や家族(特に妻) との関わりの中で、
このままの状態では支障が出そうなので、
なにかヒントが得られればと思った次第です。


本書のメッセージとしては、
共感障害は個性的な脳であり
そうでない人とうまく協力して補い合おう
といったものだと感じました。

「障害」というネガティブな言葉を
あえて使ったんだと思いますが、
他の人とは異なる視点を持った個性的な脳として、
文中ではポジティブに捉えられています。

※ポリコレされたのか、
 文庫本では「共感障害」が副題に格下げされてました


本書を読むにあたっての問いは、下記の 3点です。

  • 共感障害とは何か?

  • なぜ共感障害が増えているのか?

  • 共感障害と生きるには?

本稿では、問いに対する考察をまとめています。



① 「お前のものは俺のもの」ができない

問い:
共感障害とは何か?

共感障害とは、一言でまとめると、
必要な情報を認知できず、
思考・行動のルールが作れない状態
です。

本書の冒頭で紹介されていた例だと、
「会議が終わって先輩が部屋の片づけをしているのに
それを手伝わない後輩」が該当します。

仕事に対するやる気はあるのに、
こういった「気配り」的なことが苦手な人、
皆さんの周りにも思い当たらないでしょうか?


他者への共感を示さない人は、
周りの人の活力を奪う「エナジー・バンパイア」
として扱われてしまいます。

特に女性は共感されることを重視する傾向にあり、
相手に共感されない状態が続くと自己価値を喪失する
「カサンドラ症候群」に陥ることもあります。

これは家庭で気をつけねば…


共感障害の傾向を持つ人は、
認知機能の働きに特徴があるため、
他者の所作を自分の所作に置き換えることが苦手です。

冒頭の例の後輩は、
そもそも先輩の所作を認知できていないか、
先輩の所作を自分の所作に置き換えられない
状態だと言えます。

「お前のものは俺のもの」という一見横暴な考え方は、
相手の所作をちゃんと認知できた上で、
過剰な共感力を働かせていると言えなくもないですね。

もし「俺のものはお前のもの」と続くなら、
普通にいいヤツだし。


共感障害の傾向は、脳科学的なアプローチによれば、
ミラーニューロンの過不足
によって起こるとされています。

ミラーニューロンとは、他者の感情や行動といった情報を
自分の脳で再現する仕組みのこと。

ミラーニューロンが過活性だと、
外から入ってくる情報が多すぎて、
どの情報にフォーカスするか判断できなくなります。

一方、ミラーニューロンが不活性だと、
先輩の所作が風景に溶け込んでしまい、
フォーカスすべき対象として捉えられなくなります。


② 技術がコミュニケーションを断片化した

問い:
なぜ共感障害が増えているのか?

共感障害が増えた原因は、
技術の進歩がコミュニケーションのあり方を
急速に変えたから
だと考えました。


本書では、現代のコミュニケーションモデルは
SNS によって作られている
と指摘されています。

著者の大学生時代のエピソードとして、
日本の各地方でコミュニケーションモデルが
異なることが語られていました。

東日本出身の著者が奈良の大学に進学して、
大阪のいじりや京都の「ぶぶ漬け」を
体感した話は興味深いです。

そして、そういった各地方ごとの多様性が、
SNS のコミュニケーションモデルのもとで
統一されつつあるとしています。

多様性を体感する機会が減り、
相手を理解するための試行錯誤が失われたことで、
共感力が低下しているのでは、ということですね。


それに加えて、SNS のコミュニケーションは
認知すべきことが断片として切り取られた状態
であることも原因だと考えました。

SNS で交わされる画像や短文は、
発信者の認知によって
現実世界から切り取られた断片です。

膨大な情報の中から、認知すべき断片を
自力で取捨選択しなければならない現実世界に比べれば、
SNS は頭を働かせる必要のないやりとりです。

コミュニケーションのスピード感は高まったものの、
共感力を鍛える機会は減ったと思われます。


また、幼少期の親子間での
コミュニケーション不足
も指摘されています。

自分が笑えば相手も笑う、
自分が声を出せば相手も声を出す、
といった体験を通して、
共感の仕組みを定着させる必要があります。

そう考えると、長女が選んだモノマネぬいぐるみ、
実はいい買い物だったかも。


特に授乳中は口元が微細に動いており、
ミラーニューロンが最も活発
になっています。

授乳時にスマホいじりに興じていては、
ミラーニューロンの不活性につながりかねません。

産後うつの問題もあるので
一概に責められないとしつつも、
結果として共感障害を生んでいると指摘されています。

本書では触れられていませんでしたが、同じ理屈なら
食事中もミラーニューロンが
活発になるのでは、と思いました。

家族で顔を突き合わせてご飯を食べることで
共感力が育まれる、というのは、
もっともらしい感じがしますね。


③ 多様性の受容と共感をルール化する

問い:
共感障害と生きるには?

共感障害の傾向がある人に対しては、
認知の仕方が異なることを受け容れる姿勢が大切です。

集団や文化に多様性があるように、
個人単位でも多様な脳・多様な認知の仕方があります。

認知の仕方が異なる以上、
わかりあうことは難しいですが、
わからないなりにうまくやる方法はあります。


例えば、「こういう場合はこうする」と
タスク化・ルール化すれば、
認知できる
ようになります。

共感障害の傾向がある人は
何をすべきか見出すのは苦手ですが、
タスク化してルール通りに動くことは
得意な傾向があるそうです。

相手の脳に合わせた指示の出し方がある、
というわけですね。

様々なことをタスク化する手間はかかりますが、
軌道に乗れば忠実な腹心になってくれるでしょう。


一方で、共感障害を自覚する人にとっては、
共感をルール化するのがよさそうだと思いました。

たとえば他者の話を聞くときに、
うなずいたりメモを取ったりすることを
ルールにしてしまう。

指摘されたときに
「気がつかなくてすみません」と
素直に謝ることをルール化するのもよさそうです。

素直に努力している姿勢を見せるだけでも、
相手からの見られ方は大きく変わります。

「やる気のない人」と思われるよりも、
「やる気ある不器用な人」と思われる方が
かわいがってもらえますしね。



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あんぱんだ | 視える化推進エンジニア
いつも図書館で本を借りているので、たまには本屋で新刊を買ってインプット・アウトプットします。

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