読書まとめ『1文字1円を10円に上げる 書く副業』→文章力と、本業のスキルや趣味を掛け算
『1文字1円を10円に上げる 書く副業』日比野 新
一言でいうと
文章力と、本業のスキルや趣味を掛け算
概要
「時間の家計簿」の書籍出版に向けて、ライティングの本を読んでみました。文章を書くためのスキルだけでなく、どんな仕事・依頼主を選ぶか、どうやって単価を上げるか、といったことまで丁寧に解説されていることが特徴的でした。「ライティングをすること」ではなく、「ライティング業として稼ぎ続けること」にフォーカスされている印象です。
ライティング業で稼ぎ続けるためには、文章術だけで成果を出そうとするのではなく、本業や趣味で得た知識・スキルを掛け合わせることが重要だと感じました。特にマーケティングやSEO対策は、今後需要が高くなることが予想されます。また、趣味やプライベートでの体験談が語れると、文章の内容がよりリアルになり、読者にも伝わりやすくなります。
ライティングもまさしく「知の総合格闘技」です。以前に読んだ『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』で、投資は「知の総合格闘技」だと提唱されており、その引用です。そもそも自分の行動で報酬を得ようとするなら、常に自分の全知識をフル活用した総合格闘技で挑むべきだと考えました。
また、人を動かす文章を書くという点においては、副業を検討していない人に対しても学びになるところがある本です。文章を書くことで報酬を得る仕事(ライター、作家など)でなくても、資料やマニュアルの作成、メールなどで文章を書く機会はたくさんありますからね。文章の目的は多くの場合、読んだ人に行動を促すことなので、ライティングのスキルと通じるところがあります。
本書が想定している読者の問いは、冒頭で明記されているとおり、以下の3つです。
それぞれに対する回答をまとめてみました。
① 読者と依頼主の心に響き、人を動かす文章術
まずは想定読者のペルソナを具体的に設定します。想定読者が自己紹介で使う資料を作るイメージですね。年齢・職業・出身地・趣味などの基本的な情報から、ライフスタイル・ニーズや不満などの内面的なことまで、具体的な人物像を作っていきます。こうすることで、誰の悩みを解決するのか、具体的に視える化することができます。そして、ペルソナの抱く感情(喜びや悩み、本当にほしいもの)に共感することで、ペルソナの気持ちに寄りそうことを心がけます。
具体化したペルソナに共感しつつ、ペルソナが行動を起こしたくなるような文章を書いていきます。一般的に言われる文章術のテクニックは、ペルソナを明確に決めてこそ効果を発揮するということですね。本書でも複数のテクニックが紹介されており、これはすぐにでも使おう!と思ったものをいくつか列記します。
肯定文を使う。否定文を読むと人はネガティブになるので。
愚かでありたい人はいない。読者の気持ちを害さない言葉選び。
× 知らないんですか?知らない人は損しています。
○ 知っていますか?まだ知名度は低いですが。例え話で視覚に訴える。使いやすいのは料理。食材集め、下ごしらえ、調理、と手順がおおむね決まっているから。
読者を主語にする。行動した後の未来を読書にイメージさせる。具体的に手に入ること、方法、期間を明示する。
× 中古車の正しい購入方法
○ 次の車を購入しましょう、この方法なら安心ですメリットとベネフィットの両方を提示する。メリットは客観的な利点、ベネフィットは主観的な利益。
読者に響く言葉を使うには、言葉集めが重要です。これから書くジャンルの雑誌や専門誌を読んで、そこで使われている言葉を集める、といったことを著者はしているそうです。また、日常で「刺さった言葉」をメモしてストックしておくのも効果的。広告や映画の予告はもちろん、SNSや街中で聞いたリアルな声にもよいヒントがあります。
② 書くのが遅い・手戻りが多い・単価が低い
文章を書き始める前に必ずやるべきことは、構成を決めて目次を作ることです。本書では「THINKとOUTPUTを分ける」と表現されており、なるほどと印象に残りました。THINKとOUTPUT、それぞれに集中することで、今なにをするべきかが明確になり、効率がよくなります。なお、テッパンの構成として、なぜ・何・どうやって・どうなる、も紹介されていました。
時間ができたときにすぐに取り掛かれるように、スケジュールを先に立てておきましょう。明日は調査、あさってはタイトル、その次は目次、といった形ですね。副業として取り組む以上、使える時間は限られているので、時間ができたときにすぐに取り掛かれるようにしておくと、時間を無駄なく使えます。これはライティングに限らず使えるテクニックだと思ったので、私は朝活に応用しています。
文章に一貫性があると、修正依頼などの手戻りを減らすことができます。そのためのテクニックのひとつが、文章の書き出しと終わり(まとめ)を同時に書くことです。中間部で多少脱線しても、話の始まりと終わりには一貫性があるので、納得感を与えやすくなります。
手戻りを減らすためのもうひとつのテクニックが、用語や略語を統一することです。駆け出しライターに多いそうです。まずは自分の中でルールを明確化しましょう。また、依頼主が使っている言葉を使うことも重要です。ライティングの成果物は、読者よりも前にまず依頼主が読むことになるので、依頼主のルールに合わせるようにしましょう。ここは、自分が書きたいから書く文章と、依頼主に納品するための文章との大きな違いですね。
時間効率は高いのに、思ったより稼げないなら、文字単価・案件単価を上げましょう。そのための方法は次項で紹介します。
③ 依頼主と信頼を築いて価値を理解してもらう
一言でライティングといっても多くの種類があり、それぞれ求められるスキル、どうやってその案件を獲得するかが異なります。難易度や依頼元に応じて報酬につながる文字単価も上下するので、各自のスキルやライフスタイルに合わせて選択しましょう。
仕事を選ぶときは、案件を見るではなく、依頼主を見ることが重要です。どんな人か、どこにこだわるか、連絡の頻度やタイミングはどうか、などから、今後の単価交渉ができそうか、継続して案件を受注できそうかを見極めるそうです。私は現在いわゆるSESとして契約顧客に常駐勤務をしているので、依頼主選びの勘所は本業と重なる点があると感じました。
単価交渉・案件受注の手段としては、相手が楽できるもの、それをイメージできるもの提案することが挙げられます。より上質なものを提供する(アップセル)、既存のものに関連したものをついで買いしてもらう(クロスセル)、といったマーケティング手法です。著者はひとつの案件を納品する際に、次の提案を2つ出しているそうです。その際は、半年先の未来よりも、来月程度のスケジュール感にしておきましょう。あまり遠い未来だと、相手はイメージしにくいですからね。
副業でライティングをする以上、依頼主に費用をはっきり伝えて請求することを疎かにしてはいけません。私も含めたサラリーマンだと、自分で費用を請求する経験があまりなく、抵抗感がある人も多いでしょう。しかし、ぼかさずに費用の話ができるかどうかは、信頼関係のバロメータとも言えます。費用の話をあいまいにしたままの関係性からは、好条件の案件も出てこないし、単価交渉も難しいものです。ビジネスパートナーとして、請求すべきところはしっかり請求する覚悟が必要です。この点、副業ライターの場合は有利で、別に本業があり、案件が途絶えても路頭に迷うことはないので、強気にいきましょう。
いつも図書館で本を借りているので、たまには本屋で新刊を買ってインプット・アウトプットします。