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読書まとめ『世界史と地理は同時に学べ!』→歴史、だいたい地理のせい

『世界史と地理は同時に学べ!』山﨑 圭一


一言で言うと

歴史、だいたい地理のせい



概要

書店で見かけて気になったので、
図書館で借りて読んでみました。
(最近多いパターン)

同著者の本を読むのは、
経済・地理に続いて3冊目。

著者は社会科教師にして YouTuber でもありますが、
YouTube をまだちゃんと見ていません…

やっぱり本がいいんですよねー。


本書は、世界史のイベントを
地理の目線からも見てみよう

といったコンセプトです。

それこそ社会科の先生が授業中に
話してくれる小ネタを集めた感じかなと。

扱うイベントは時代・地域とも幅広く、
近現代・ヨーロッパがやや多めです。


ものごとを歴史(時間) と地理(空間)、
両方の視点から考える
きっかけにしてほしい、
とあとがきで述べられています。

歴史と地理の視点を組み合わせることで、
点の理解から、線・面での理解に発展させることができます。


また、ものごとを複数の視点で見る
訓練にもなりそう
ですね。

多様性の尊重が叫ばれる現代においては、
ものごとを自分の視点だけで見るのではなく、
相手の視点・第三者の視点で見ることが求められます。

学校の教科のように
歴史は歴史、地理は地理と分断するのではなく、
両方の視点を組み合わせることの大切さを
本書から学び取ることができます。


本稿では、私が興味をそそられた
世界史と地理の交差する事例を 3つ紹介します。



① ポーランド:陸に壁、砂州に運河

平坦な土地が広がり防御に適さないポーランドは、
他国の侵略を受けてきた歴史があります。

現代でも、南東はウクライナと隣接しており、
EU や NATO にとっての対露最前線として
緊張が高まっている地域です。


2022年から、ポーランドは、
北東のベラルーシとの国境に壁を建設しはじめました。

ベラルーシ経由での中東移民を防ぐことが目的です。

この壁の建設が世界遺産の
「ビャウォヴィエジャの森」を破壊することになるため、
人権団体や自然保護団体の反対を招いています。


一方、バルト海に面するヴィスワ砂州には、
運河が建設
されました。

ヴィスワ砂州がせき止める潟湖からバルト海に出るには、
ロシアの飛び地である
カリーニングラードを通る必要がありました。

砂州の根元に運河を建設することで
ロシア領を通らずに済むようになります。

2022年にこの運河は開通し、
現在も拡幅工事が進められているとのことです。


人間の都合で地形を改変している例
ふたつも並んでいたので、興味を惹かれました。

防御に適さない地形であること、
東西陣営の境界であることから、
人為的に地形を改変する必要が出てきたわけです。

自然が作り出した地形を人間がどう活用してきたか、
というテーマが最近の私の関心事です。


地形の影響は、第一次産業や人々の
移動ルートに現れることが多いですが、
人間が作り出した国家や国境の概念が重なると、
かなり複雑な状況
になります。

その結果、必要なかったはずの
壁や運河を作ることになる、
ということを学べました。

こういった好ましくない経緯で作られた壁や運河が、
ベルリンの壁のような
過去の遺物になることを願ってやみません。


② マダガスカル:実はアジアに近い

アフリカ大陸の南東に位置する島国・マダガスカルは、
アジアに近い存在
だと述べられていました。

マダガスカルは東南アジアと同じ
オーストロネシア語族に属し、
マレーシアのマレー語に似た言葉を話しています。

住居や楽器なども東南アジアとの共通点が多く、
食生活においても稲作を行い米を主食にしているそうです。

動物が主役のアニメ映画『マダガスカル』の影響もあり、
自然豊かで固有種が多いイメージはありましたが、
文化的にはアジアに近いというのは意外でした。


マダガスカルがある東アフリカから、
インド・東南アジアに及ぶ地域は、
環インド洋地域と呼ばれています。

イスラーム商人がこれらの地域を結んで交易を行っており、
アフリカとアジアをつないできた歴史があります。

アフリカとアジアは、
遠いようで近い存在だったんですね。


現代においては、
中国が東アフリカへの進出を狙っています。

東アフリカは今後の大きな経済成長が見込めるとされ、
中国の一帯一路構想の重要地域となっています。

中国の歴史を見ても、
宋や元の時代にはインドに交易船を就航させ、
明の時代には鄭和の大船団が
東アフリカにまで到達しています。


これからはアジア・アフリカの
時代が来る
と言われています。

本書の解説は近現代の表舞台たる
ヨーロッパが中心ですが、
今後はアジア・アフリカの歴史にも注目したいと思いました。

個人的にはモンゴル帝国や中央アジアが
気になっているところです。

たまには小説も読みたい。


③ 旧英国植民地:独立後もつながりを保つ

国際連合に次ぐ 56か国が参加する国際機関として、
コモンウェルス
があります。

旧イギリス植民地が参加する、
強制力のゆるい国際ネットワークです。

参加国は多いものの
国際的な影響力は小さいので、
少なくとも日本では知名度が高くないんだとか。


イギリスは二度の世界大戦に勝利したものの、
植民地から物資や人員を動員する代償として、
植民地の自治や独立を認めることになりました。

その際、旧植民地とケンカ別れするのではなく、
旧イギリス植民地を含むネットワークである
コモンウェルスに留まることを勧めました。

独立側も、言語(英語)・教育・法律などに
共通点がある国同士でつながれる恩恵があり、
多くの国が参加しています。


イギリスから独立した側が、
植民地支配を負の歴史としつつも、
全否定はしていない
ところがいいですよね。

支配から逃れて自立しつつ、
システムや横のつながりは残して
活用していく姿勢がたくましいなと。

同じタイミングで読んでいた
『働かないニッポン』の読書まとめで、
退職してもゆるいつながりを保つ、
という話題に触れていて、似ていると感じました。


イギリスと旧植民地の関係は、
会社を退職して独立した社員が、
元の会社から仕事を請け負うようなもの
なんだと思います。

リクルートやキーエンスくらいのレベルだと、
退職した OB 同士で連携がある、
みたいな話も聞いたことがあります。

支配したり依存したりするのではなく、
自立しつつゆるやかに連携する関係性の方が、
今の VUCA の時代に合っていると改めて感じました。



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