読書まとめ『絶妙な「数字で考える」技術』→数字を光らせる、使い方・見せ方の工夫
『絶妙な「数字で考える」技術』 村上 綾一
一言でいうと
数字を光らせる、使い方・見せ方の工夫
概要
数字に対する感覚を鍛えようと思って読んでみました。フェルミ推定の概要、財務諸表や株価指標(PBRやROE)、計算スピードを上げるテクニックなどが浅く広く取り上げられています。気軽に読める、わりと雑学本の部類だと思います。
覚えておこうと思ったことについて、3点でまとめました。
① フェルミ推定:既知の情報から論理的に推測
・フェルミ推定の具体例として、GAFAMの入社試験問題がいくつか紹介されています。実際に妥当な数字になるかどうかよりも、論理の組み立て方として勉強になりました。
問い:アメリカにガソリンスタンドは何軒あるか?
仮定1:アメリカ国民3億人のうち、半分が自家用車を所持している
仮定2:走っている自動車のうち、3台中1台がトラック・バスなどの事業用車で、残りが自家用車
仮定3:自家用車は週1回、事業用車は毎日、ガソリンスタンドで給油する
仮定4:ガソリンスタンドは車1台を5分で給油し、給油機3台が一日15時間稼働している
(計算は省略します)
答え:20万軒
・フェルミ推定業界では有名な問題らしく、インターネット上にも「解答」をたくさん見つけることができます。
・また、本書が発行された2008年と現在で比較すると、電気自動車の普及などに伴い、ガソリンスタンド数は減少傾向と考えるべきでしょう。参考までに、日本国内のガソリンスタンド数は、2008年度末(H20)の42,090軒から、2022年度末(R2)は29,005軒と、およそ3割減少しています。
・フェルミ推定に必要なのは、センス・知識・発想だといいます。計算式を作るのが発想、その計算式の各項を埋めるのが知識、といったイメージですね。国や地域の人口や、車の所有率などの知識を持っておくと、試算が速くなりビジネスでも役立ちそうです。
・これはフェルミ推定…!? と最近思ったのが、すみだ水族館の「チンアナゴとねむリウム」で公開されていた、チンアナゴ愛好家の人数推定です。既知の情報=過去イベントの実績を根拠にして論理を展開しつつ、隠れファンという推測しにくい不確定要素を盛り込むことで、最終的に数千万人にまで飛躍するオチがついています。
② ベイズ推定:結果を根拠にして前提を疑う
・ある夫婦の第一子が女の子、第二子も女の子の場合、第三子も女の子である確率は、ベイズ推定では75%になります。統計上は、生まれる子どもの性別は男女50%ずつに近くなるが、特定の夫婦に限れば男女50%ずつではないかもしれない、と考えるそうです。
・もっとシンプルな例えだと、コインを投げて表が出たときに「このコインは表が出やすいのでは?」と考えることだと思いました。彫りや摩耗によって重心が変わるので、コインの出目の確率はキッチリ50%ずつにはなりません。コインの出目を当てるゲームであれば、今まで多く出ている目に賭けるのがベイズ推定的な戦略になりますね。
・(ポケモンカードの)コインの表裏の偏りを実測で検証しているnote投稿がありました。有意な差だと考えるかどうかはあなた次第。
・また、ベイズ推定を統計学としてわかりやすく説明しているnoteがあったので、紹介させていただきます。新しいデータを結果に即反映(ベイズ更新)できるので、ビッグデータの分野でも使われているそうです。
③ 数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う
・数字は絶対値のデータでしかなく、要は見せ方次第ということです。「視聴率1%」というと大したことなさそうですが、「120万人が視聴」と表現すると、なんだかすごいように感じられますね。割合と数値を使い分けることで、自分の主張を伝えやすくなります。
・10%ポイント還元より、10%値引きの方が得です。商品の値段を4,000円として計算してみると、前者は4,000円で4,400円分買える、つまり4,400円から400円値引きされている状態なので、400÷4,400*100≒9.1%値引きと同じになります。もっと極端にして還元率10%ではなく100%だと考えると、前者は4,000円で(4,000+4,000)円=8,000円分買える、つまり50%値引きと同じ計算になります。
・偶数は安らぎ、奇数は注目を集める効果があります(3だけは安定感がある)。奇数の中でも、5以上の素数はさらに奇抜な印象を与えやすく、ナポレオン・ヒルの著書には『巨富を築く13の条件』や『17の成功法則』などの素数を使ったものがあることが知られています。相手に与えたい印象によって、使う数字をコントロールするとよいでしょう。