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苦草堅一「八百正の二代目の趣味」
◆作品紹介
庭先の盆栽、干し柿、物干しにかかった股引、並んで見える自転車と三輪車。長閑な通りをそぞろ歩けば、ホラ、「やおまさ」が見えてくる——滋味さえ感じる語り口に乗せられてのんびり歩いていたあなたはやがて、街の本当の姿に触れることとなる。下町散歩不条理SFとでも言うべき(言うべき?)その深淵に。思えば街とは、面影や情緒などと呼ばれる無数の残留思念に彩られた場所であり、わたしたちは常にそれらに取り憑かれながらそこを漂流していると言えるのかもしれない——いや、しかし、これは一体、何を読まされたのか? 二代目の声が脳に染み付いて離れないこと請け合いの怪作である。(編・青山新)
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