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#人生を変えた一冊 × 世界の見かた × アイデンティティ
2023年4月、まさか40代になって自分のアイデンティティを見失うとは思ってもみませんでした。「今の『いま』」で自己紹介をするとしたら、
4月1日から無職です。
同居する家族はいません。
これがいまの自分。ある意味では、人生の折り返し地点で何の縛りもないオールフリーな状態。改めて作り直す『アイデンティティ≒自分らしさ』が、noteでのテーマです。
(約2500字)。
1.人生を変えた一冊
いきなり結論です。
ダニエル・キイス著「アルジャーノンに花束を」
ここ、noteにいらっしゃる皆さんは他のSNSを利用する方たちと比べれば、本、活字、文章が好きな方が多いのではないでしょうか。
自分は18歳になるまでは典型的な「活字離れ人間」でした。
18歳までの自分は断然「マンガ派」、小学校低学年くらいの時は図書館で本を借りたりもしましたが、わずかな時期だけ。
年の離れた兄の影響もあり、週刊少年ジャンプは毎週欠かさずに読んでいたし、鳥山明さんが大好きで「ドラゴンボール」、「Dr.スランプ」の単行本を集めたり、友だちといろいろなコミックを貸し借りしていました。
中学三年間、高校三年生の一月までおそらく本は一冊も読んでません。
転換点は「大学センター試験(当時の名称)」を土日で受けた後の月曜日から。
試験翌日のクラスで一斉に、センター試験の自主採点をしました。当時はまだ一人一回線のネット環境が整っていない時代だったので、学校のパソコンを順番に使って「バンザイシステム」で合格できそうな大学を選定するのでした。(バンザイシステムとは自主採点した得点を入力して偏差値を割り出し、希望する学部や学校を抽出してくれるサイトでした。名前の響きが懐かしい…)
自分の希望条件は、
障害児教育を専攻
学費の安い国公立のみ
滑り止めでの私立大受験もなし
この条件下でバンザイシステムが割り出した合格範囲内の大学は二校のみ。地域条件も絞ると必然と一校しか残りませんでした。
自分が行けそうな大学の二次試験は「面接」と「小論文」。有名大学だったりすると過去の卒業生が試験内容などを資料で残しておいてくれたのですが、自分の高校でこの大学を受験するのは自分が初めて。
赤本だけが試験対策の頼りだったのですが、面接については内容不明。小論文の過去課題は「排泄物、物差し、眼鏡の3つの言葉を必ず入れて卒業式の送辞を2000字で書け」などと奇を衒ったお題ばかりで何のことやら。
希望校の二次試験対策で担任からの指導は、
「小論文対策にひたすら本を読め! そして書け!」でした。
その日から通常授業中も自分は読書をすることが公然と許可され、ひたすら小論文対策に本を読み始めました(実践練習として小論文も書きまくって国語の先生に添削してもらうのも同時進行で)。
2.幸せはいろいろな角度から
自分に「アルジャーノンに花束を」を紹介してくれたのは母の友人の保健師さん。自分が障害児教育を専攻したいと母から聞いてお勧めしてくれました。
本作はかなり古い作品で、自分が知る限り英語版の映画、日本でドラマ化もされました。
どちらも映像で見ましたが、自分にとって「人生を変えた一冊」です。
断然、本で読むべき作品です。
映像化・視覚化することが必ずしも良いとは言えません。
あらすじとしては、知的障害を持つ青年・チャーリーが知的能力を向上させる実験的な脳外科手術を受けます。生体実験として同じ手術を受けたネズミ・「アルジャーノン」と手術後の知的能力の向上を図るために様々なテストを受けていくうちに、チャーリーとアルジャーノンには友情が芽生えます。
脳外科手術は成功し、チャーリーの知的能力は健常者を上回るほど向上していきますが、知的能力が増すほどにこれまでの生活や人間関係などが理解できるようになり、、、
という自分の拙いあらすじですが、こちらも参考にしてください。
なぜ、本で読むべきか。
知的障害のあるチャーリーが書いた報告書という体で物語は進行していきますが、物語の冒頭はすべて平仮名です。内容も幼い子どもが書いた日記のように表現も拙い。
それまで本を読まず、学年相応の教科書しか目を通してこなかった自分には衝撃の表現でした。「なんだ、この平仮名ばかりで読みにくい本は?!」
手術後にチャーリーの知的能力が向上するにつれ報告書という体の文章はどんどん高度になっていき、知的能力のピーク時には学者が書くような難しい描写や内省もつづられるようになっていきます。
マンガは絵とコマ割りなどの視覚表現と文字の組み合わせ、テレビは動画の視覚表現と音声の聴覚表現の組み合わせ、自分はそればかりに慣れきっていました。
この「アルジャーノンに花束を」という作品で、文字と文章だけで表現する可能性に自分はすっかり魅了されたわけです。
3.いろいろな角度の世界の見かた
ぜひ原作を読んでいただきたいです。お時間の難しい方は前述にリンクしたあらすじだけでも是非。
読了後の18歳の自分は、
「何をもって人生の幸福をとらえるのか」
と壮大なテーマを持つにいたりました。いまだ答えには至らず。
障害があるから不幸? ないから幸せ? 障害に限らずとも何をもってして、人の幸せを語ることができる?
この一冊のおかげで自分は「読書」や「文章表現」という新しい境地を開くことができました。まさに「人生を変えられた」。
何とか大学に入学でき、貧乏学生生活に突入するわけですが、これまで好きだったマンガを買うことがなくなりました。マンガ自体が好きなことに変わりはないのですが、コミック1冊300~500円だとして一時間もあれば読み切ってしまいます。
対して、自分は読書ペースが遅いこともあり文庫本500~1000円で1~2週間以上は楽しめるコスパの良さも非常に助かりました。
学生時代は小説を読み漁り、
就職してからは仕事関連の専門書を読むことが増え、
自分の仕事に関連することだけでは行き詰まりを覚え、今はまったく関係のない本ばかりを読んでいます。
ありきたりな表現ですが、本はいろいろな角度で世界を見せてくれる一番身近なツールです。