大好きだったあの人vol.23
帰ってからのアタシは、彼との結婚についてずーっと考えていた。
仕事をどうするのか。
夜のバイトは悩む必要もなく辞めるとしても、昼の仕事は?
東京へ行くなら退職しなければならない。
東京に行ってから再就職するにしても、当面の借金返済はどうしようか。
絶対に彼の手を借りたくないと思ってたけど、やっぱり助けてもらわないと難しいだろう。
仕事をしていても、何をしていても、集中できずにずーっと考えてた。
印刷室でIR資料の綴込み作業をしていると、同じ部署の女性の先輩が、「請求書の印刷させてよ〜」と入室してきた。
先輩は作業しながら
「ねぇ、ane、アンタ、彼氏、できたでしょ?」
と言う。
「え?」
「だってサ、アンタ最近めっちゃキレイになったモン」
「ちょっと先輩、ソレ、セクハラ発言デスよ〜」
「いいじゃん、aneと私の仲じゃ〜ん」
その先輩は、プライベートでもよく飲みに行ったり遊びに行ったりして、アタシを妹のように可愛がってくれてた先輩だった。
先輩の恋愛の悩みなんかも聞いたりしてた。
「スミマセン、先輩には話してなかったデスね。
去年の暮れからお付き合いしてる彼氏がいます。
6月に東京に転勤になって…
実は夏休みに会ってきたんです。親御さんにもお会いして…
いつ頃アタシが東京へ行くかって話になって…」
「おおーい!いきなり『結婚』にまで話が進んでんじゃん⁈
なんだよー、言いなよー、水臭いなー」
「スミマセン…」
「なんだよ、チクショー、aneにまで先越されんのかよ〜。次は私が結婚!って思ってたのに〜」
「なんか、ホント、スンマセン…」
「ええー、いつ頃東京行くってハナシよ?」
「イヤ、まだ、そこまで具体的には。
次アタシが彼のトコ行った時に決めよう…
って…」
「ん?ねぇane、なんか悩み事でもあんの?
なんか歯切れ、悪いよ?」
「…なんか、いろいろ問題あって。
両親にも反対されてるし…」
「なるほど、反対の理由は?」
「ちょっと年齢差があるんです」
「何歳差?」
「んー、ちょっと言えない」
「ウン、すんごい差ってコトな」
「もー、先輩なんでもわかっちゃうじゃないすかー」
「aneも気になってんの?年齢差」
「気になってたら付き合わないっしょ?
アタシは気にしてないデスよ…
多分…」
「気になってんじゃん」
「彼の年齢は気にしてないんです。
だけど、息子さん、あ、彼バツイチなんスけど、息子さんの年齢思うとちょっと…考えるトコ、あって…」
「息子何歳よ?」
「…25歳」
「ぶわははは!ane、アンタより年上じゃん!
ウケる!」
「だから言いたくなかったんだってば…」
「ゴメン、ゴメン。
あのさ、私はね、aneが良いって思ってんなら、相手がバツイチだろうが、息子が年上だろうが、そんなトコは問題じゃないと思うのね」
しばらく考えた後に先輩は
「あのね、私が本当にaneに考えてもらいたいのは、aneのご両親のコト。
親はサ、アンタのコト23年間見続けてきたワケでしょう?
その親がサ、そのオトコにアンタのコト任せたくない何かしらの理由があるから反対してんでしょ?
ソレを無視して結婚していいのかな?って思うワケ」