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カオスなヤツら
隣県に用事で来ていた その帰り際、ふと今いる地点が知り合いのおじさんちに近いことを思い出した
その方とはどこで知り合ったかと思い返せば、数年前まで月1か2で通っていた工芸教室だった 木から作ったスプーンや箸などをヤスリで磨き上げ、漆を塗ったり補修をしたりする内容だったような
そのおじさんは当時気まぐれなカフェをやっていた 開いてたり開いてなかったりの
カフェの名前は忘れていたが工芸教室の場所は覚えていたので、なんとなくの方角で車を走らせた そしたら案外簡単に到着してしまった
敷地内の駐車場には先客らしい2台の車が停まっていた よかったお店閉まってなくてと安堵の気持ちもあいまって満面の笑みで、木々の奥に建つ小さな喫茶店へ向かうことにした
しかし車を降りてみると、店の入り口に木材が積まれハシゴやらビニールシートやら明らかに工事中の様相が見てとれた そしてその入り口横でおじさんたちが談笑していた 身内感満載である
不意に現れた親しげなナターシャは完全に浮いていた そしてしどろもどろで「おじさんこんにちは、お久しぶりです」と挨拶をした おじさんはへっと狐に摘まれたような表情で狼狽えていた
その様子を見てとって、あの時の工芸教室でご一緒した云々ナターシャですと改めて名乗ってみた あぁぁと力強く頷いておじさんは造りかけの新しい小屋を見せてくれた
でもおじさんは終始目が泳いでいた どうしよう謎の乱入者に狼狽していらっしゃるではないか 絶対ナターシャのこと覚えてないのを確信した
さっきから私も親しげに話しかけてはいるが、おじさんおじさんと連呼して怪しさ満点 ここで〇〇さんと名前を呼びかけるのが自然の流れだろうが、いかんせんそれは不可能 だってナターシャもおじさんの名前を忘れてしまっているではないか 今気づいたのだ
私たちをつないでいるのは「おじさん」という不確かなワードのみ 儚い
変な時間が数分流れて外に出た 先程のお仲間は屋根のうえに登っていた おじさんが気を取り直したように言った「あの人ね、最近ポツンと一軒家出た人」これまた突飛なワードをぶっ込んできた
ええすごいどの辺のぽつんとですか? しばし外の出てポツンと一軒家の話をし、不自然に別れを告げた また寄りますねー はいはいー
いやはやカオス
屋根に登っていたぽつんとのその方は、無の表情で私を見下ろしていた
ナターシャ
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