あんこ  編集/ライター

Non e’ ancora pronto.(準備はまだ⁈) 大学でクラシック(声楽/作曲)を学んだ元DTMer。 某社マーケティング→某新聞編集局出身のモノ書き。表では聴けないB面を収録。アートの世界を下から見上げた風景に心を奪われる。ピアノと藤井風さんが気になってます。

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Non e’ ancora pronto.(準備はまだ⁈) 大学でクラシック(声楽/作曲)を学んだ元DTMer。 某社マーケティング→某新聞編集局出身のモノ書き。表では聴けないB面を収録。アートの世界を下から見上げた風景に心を奪われる。ピアノと藤井風さんが気になってます。

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藤井風日本武道館ライブ『Fujii Kaze “NAN-NAN SHOW 2020 ” HELP EVER HURT NEVER』@ 日本武道館を観て

昨夜は新曲も聴かずに寝た。聴くと眠れなくなるのは確実だったから。いま「へでもねーよ」を聴いてやっと泣いている。キックやパンチをかましてくる“あんた”は自分自身の弱さでもある。そう、生きるとは「へでもねーよ」で乗り越えていくことばかりだ。こんなタイトルで涙腺崩壊って何なんw  セトリなんてどうでもいい。誰かがメモってupするだろうから。そんなことより目の前の音と映像に集中したい。普段は手の温度が高く温かい指先なのだが、緊張で指先が冷たくなっていた。これではまるで自分がステージ

    • 藤井風 日産スタジアムライブレビュー「視覚と聴覚を超越する、夢幻の美と音楽の共鳴」

      ■見る者の心を一瞬で、虜(とりこ)にした藤井風 夏の夕暮れ、後ろでひとつに束ねたプラチナブロンドの髪が、ライトに照らされて揺れている。髭を剃った透き通るような白い肌に、白のカフタンシャツ。長い袖をなびかせてピアノを奏でる様子は、まるで風に羽衣をそよがせて奏楽する天人のようだ。 身体の内側から、まばゆい光を放っているかと思えば、触れると消えそうな繊細で憂いをたたえる瞳。 その姿は夢幻泡影(むげんほうよう)の如く、この世のものとは思えないほど美しかった。 クラシックとジャズ

      • 藤井風 Feelin’ Go(o)d はなぜ”エモい”のか?”Y2K”カルチャーから分析

        ■「90年代っぽい!なのに新鮮」 イントロのキラキラ音は、夜明けを知らせる鳥のさえずりのよう。 「ドンドンドン!」とまるでドアをノックするように弾むシンセベース。 どの音も聴いたとたんに、懐かしさと同時に、新しい”世界への幕開け”を感じました。コーラスごとに繰り返されるキラキラのリフに期待感が高まります。 「Feelin’ Go(o)d」は夢と希望を表しているような明るく心弾む楽曲。疾走感のあるリズムは、生命力にあふれています。軽快なテンポが心地よく、ドライブにもぴったり

        • アートで読み解く藤井風「満ちてゆく」

          MVに多く見られる寓意(アレゴリー)寓意(アレゴリー)とは?美術や文学などで、よく知られているアレゴリーには、人は確実に死に向かうことを意味する「頭蓋骨」「花」「果実」「(砂)時計」などがあります。 寓意画ではダイレクトに死を表現せず、象徴的な別のものに置き換えることで、もっと複雑な意味や物語をほのめかせます。”目には見えないもの”を”形あるもの”で表現しているのです。 「満ちてゆく」映像から見えてくるもの次の2枚の画像は「満ちてゆく」のワンシーンです。 ・若い頃の彼

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          「tiny desk concerts JAPAN」初回放送に藤井風が登場!視聴レビュー

          歌とピアノだけで音楽が成立する藤井風にもってこい? 「藤井風がtiny deskに?!さすがNHK!」 告知を見た時、この企画で藤井風を聴ける喜びに、うち震えました。 ボーカルとピアノだけでも、上質な音楽を届けられる藤井風。 tiny desk concertsのコンセプトは、彼にもってこいなんですよね。 tiny desk concertsは「小さな机のコンサート」 タイトルが示すとおり、オフィスの小さな机でパフォーマンスするコンサートです。 この「オーガニック

          「tiny desk concerts JAPAN」初回放送に藤井風が登場!視聴レビュー

          藤井風「満ちてゆく」 いのちへの賛美歌

          ・時間をさかのぼって描かれる物語 ================================= 車いすに乗るひとりの高齢男性。彼は、もう自分の足で歩くことは難しくなってしまったらしい。 「避けがたく全て終わりが来る」 年齢を重ねた藤井風が、そこにいた。 「満ちてゆく」のMVは、ある男の”人生の最終章”を描いた物語だった。 ================================ 時の流れとともに深いしわと哀愁を刻まれた額。頭髪と口元にたくわえた髭は

          藤井風「満ちてゆく」 いのちへの賛美歌

          阪神・淡路大震災から29年 Be Prepared(備えよ、常に)能登半島地震で思い出した、あの日

          よみがえる阪神・淡路大震災の記憶 2024年、元日に能登半島を襲った大地震。 次々と流れてくる映像には既視感しかなかった。 うねる大地 大きく揺れて崩落する家屋 迫りくる津波 そして何よりも私が恐怖を感じたのは、輪島の朝市で知られる市場の古い家屋や建造物が炎に包まれる様子だった。 「あの時みたいだ……。」 2024年元旦の夕方、ソファに腰掛けて本を読んでいると、ふいにグラン、グランと大きな横揺れが襲った。 「地震!」 家族はみんな1階にいた。大阪北部地震の際に学

          阪神・淡路大震災から29年 Be Prepared(備えよ、常に)能登半島地震で思い出した、あの日

          藤井風 HAPPY HOLIDAYS 2023 - ねそべり配信 ”耳福”ポイント

          聴けば聴くほど「やっぱり只者ではない、藤井風」 藤井風が2年ぶりに行った弾き語りライブ配信。 彼の「元気な姿が見られるだけで幸せ」な人もいれば、「普段聴けないトークを楽しむ」人、そして「音が聴けるだけでも満足」な人もいます。 視聴する人たちの目と耳、そして心まで温かくしてくれるパフォーマンスの数々。 久しぶりに「鍵盤を操る手元がよく見える」のもうれしかったです。年末で仕事納めもまだなのに、彼の音楽にどっぷり浸ってしまいました。 My耳福ポイント(演奏順) 「眼福(がん

          藤井風 HAPPY HOLIDAYS 2023 - ねそべり配信 ”耳福”ポイント

          藤井風 「Workin' Hard」 から始まるscrap and build(破壊と再生)の物語

          極限まで削ぎ落した「J-popさ」 「Workin' Hard」は、実に洋楽っぽい。 楽曲構成は「まつり」以上にシンプルでHIPHOP味が強い。重めのビートとマイナーコードが印象的だ。短調で始まり、短調で終わる。始終、曲調や雰囲気を大きく変えることもない。 これまでジャジーなコードや転調を多用する藤井風の楽曲は、色彩豊かな絵画のイメージだった。しかし「Workin' Hard」は、あえて深紅一色で描かれているような雰囲気。 「何なんw」を筆頭に「青春病」「きらり」「g

          藤井風 「Workin' Hard」 から始まるscrap and build(破壊と再生)の物語

          「思ってたのと違う」「大好きなアーティストだったのに残念」になるのはなぜ?

          「そんな人とは思わなかった」「裏切られた」などという声もある。 だが 作品の質=作家の人格とは限らない これを理解していればショックを受けることはない。人は物事を自分の見たいように見る。アーティストが裏切ったのではなく、見えていなかった面が見えただけだ。 人間は多面的な生きもので、自分が見ている顔はほんの一面でしかない。他にも見えていない面があって当然と考える。 勝手に理想化し妄信していたのは自分で、アーティストが期待を裏切った訳でもない。 天賦の才に恵まれた芸術家

          「思ってたのと違う」「大好きなアーティストだったのに残念」になるのはなぜ?

          「年齢を意識」する?しない?

          若かりしジュリーは総合芸術だった 昨晩、ジュリーこと沢田研二の若かりし頃の映像を見ました。実は親世代のジュリー。彼のパフォーマンスをじっくり見たのは初めてですが、その魅力に、すっかり圧倒されてしまいました。    彼の歌唱力とパフォーマンスの素晴らしさは言うまでもありません。奇抜なデザインの衣装やメイクアップを施し、舞台装置と一体になって繰り広げる歌謡ショーは、変幻自在。まさに総合芸術の域に達していました。 他の誰とも違う 若さがほとばしるジーンズ姿から、キリリとタキシード

          「年齢を意識」する?しない?

          米津玄師「LADY」カタルシスと開放

          米津玄師「LADY」のMVを見て驚いた。 これはなんだ。 すっかり開放されているではないか。 まるで黒天使(米津玄師ファンに怒られませんように)がカタルシスによって漂白され、白天使に転生したようだ。 https://youtu.be/DdF-u3fe5pg 米津玄師といえば間違いなくJ-pop界のトップランナーであり、期待値以上の数字を叩き出すヒットメーカーである。タイアップ作品や様々なアーティストとの交流、コラボ作品も多くありながら、どこか孤高の詩人のような雰囲気も漂

          米津玄師「LADY」カタルシスと開放

          藤井風 LAAT大阪 ライブレポート2023/2/7 大阪城ホール

          パナスタでのライブから、はや4カ月。 昨年末の紅白歌合戦出場をはじめ、ネットメディアでのあれこれを経て、藤井風はどのように変容しただろう。 いつだって想像の遥か上を行く彼のことだ。サナギが蝶になるかの如く進化しているに違いない。期待に胸を膨らませて開演を待った。 「それでは、」 ストリングスの荘厳な音色が響き渡る中、藤井風が自転車に乗ってアリーナ後方の通路から登場した。 「わぁ…」と控えめに上がる歓声と拍手。藤井風は笑顔を振りまきながら、センターステージの外周をグルグルと

          藤井風 LAAT大阪 ライブレポート2023/2/7 大阪城ホール

          藤井風 持てる者だけが味わう孤独 

          持てる者と持たざる者 「天は二物を与えず」という。 「天賦の才」とはいうが、藤井風は天から二物どころか、三物も四物も与えられているように見える。 音楽的才能、美しい容姿、素直で誠実な性格。 そして今、国内にとどまらず世界へと繋がるチャンスも手にしている。 感情を露わにした藤井風 そんな中、昨年末に藤井風がツイッターを全部消した。 「自分の信念は揺らぐことはない」 「他人の事よりも自分の事を考えて」 と言い残して。 彼の音楽に惹かれ追い続けてきて3年あまり。これ

          藤井風 持てる者だけが味わう孤独 

          クリスマスには本来、何を想うものなのか ~マッチ売りの少女から考える~

          クリスマスとは本来、どんな気持ちで過ごすものなのでしょうか。 わたしは毎年、クリスマスには近所の教会で行われるクリスマス礼拝に参加しています。クリスチャンではありませんが音楽をやってきたことから、キリスト教には興味を持って色々と本を読んでいます。 クリスマス礼拝では、毎年、牧師さんがクリスマスにまつわる話をしてくれます。歴史や文化、今流行りの事柄ちょっとした豆知識から、聖書にまつわる教訓的な話まで何でもありで、何より時にユーモアを交えた話は現代的な解釈でわかりやすく、楽し

          クリスマスには本来、何を想うものなのか ~マッチ売りの少女から考える~

          坂本龍一 Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022 配信ライブに想う

          なんと清い、なんて静謐な「戦場のメリークリスマス」だろう。 これまで何十回、いや何百回と聴いてきたはずなのに。 今日の「戦メリ」は美しすぎて悲しくなる。初めて聴いた子どもの頃を思い出し、音楽と併走し続けた自分のこれまでが、走馬灯のように駆け巡る。 坂本龍一の骨ばった手の甲と節の目立つ指。 年月が流れたことを実感する。そりゃそうだ。わたしも初めて見たときの教授の年齢を超えているのだもの。 年齢を重ねた彼の指から紡ぎ出される音は、まろやかで丸い。水滴が落ちるかのように心の深い

          坂本龍一 Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022 配信ライブに想う