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たかが10円されど10円ー小春日和の思い出

あれは、小学1年生ぐらいの時だったろうか。友達と散々遊んだ帰り道、僕は10円玉を拾った。早速、近くの交番に届けに行った。

お巡りさんがにっこり笑って、ほめてくれた。そして自分の財布から10円玉を取り出して、「良いことをしたご褒美だ!」と言って、僕にくれたのだった。小春日和の気持ちのいい日で、木々の葉は黄色やオレンジ色に色づいていた。

それから後のことは、よく覚えていないけど、秋になると何故か小春日和とあの時の10円玉を思い出す。自分も子供を持つ親になって、あの時のお巡りさんの子供に対する優しい心遣いをしみじみ思う。

あの時、お巡りさんが「10円なんか誰も取りに来ないから、君にあげるよ」と言って、そのまま僕に手渡されていたら、良いことをしたと思っていた僕の気分は害され、後ろめたさが残っただろう。

拾った10円玉をお巡りさんの財布に戻したかどうかは分からない(損得なし、みたいな) でも、わざわざ自分の財布から10円玉を出して、「私からだよ」という風に僕にくれたお巡りさんの好意が、子供心にとてもうれしくていつまでも記憶に残っている。

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