私たちはなぜ学ぶのか(6)ー夜間中学で学ぶということ
2022年11月6日付 朝日新聞「変わる夜間中学 変わらぬ学び」の記事に思う。
記事によると、2020年の国勢調査の結果、義務教育の未修了者数は全国で約90万人いるそうである。夜間中学は、現在15都道府県に40校あるが、かつては全国に80校以上あったという。それが1950年代以降、減少していった。
夜間中学は、授業料は無料、卒業すると中学卒業資格が得られる。戦後の混乱期、仕事や家事で昼間学校に通えない生徒のためにできたが、現在では、外国籍の生徒や不登校の生徒が増えているそうである。
夜間中学に通う人の事情はさまざまであろうが、「学ぶこと」の原点がここにあると思う。読み書きを知らないことで不都合を体験しながら生きてきた人が、文字を覚えたことで、新たな世界が広がる。学校に居場所がなかった不登校の生徒が自分とは年齢も違う生徒や外国人の生徒と机を並べることで心に変化が生まれる。
「私たちはなぜ学ぶのか(5)」で取り上げた養老孟司氏の言葉が思い出される。
「例えば、ガスや電気が止まった時に火を起こせるか。トイレがない時、穴をどう掘るか。そういうこと=生きるために必要なこと、から学びは始まるのだ」
夜間中学で学ぶ生徒にとって、ここで得られる知識やスキルはまさに「生きるために必要なこと」であろう。学ぶことが人々の中に眠っていた力を覚醒し、 希望や勇気を与え、本来持っている素晴らしい生きる力を開花させる(Empowerment エンパワーメント) 途上国の女性たちの識字率を上げることが、乳幼児の死亡率を下げたり、衛生状態や栄養状態を改善したように、知識や技術を身につけた人たちの経済状態が向上したように。
現在、大阪市が4校の夜間中学を統廃合して3校にするという計画を進めていることに対して、存続を求めている生徒の言葉に耳を傾けて欲しい。
「読み書きや色んな勉強ができる夜間中学は私たちにとって『命』なんです」
学校の形態は多様な方がいい。一人でも多くの人が学ぶことにアクセスできるように、夜間中学という学びの場所が拡散して欲しい。形骸化してしまった今の学校教育より、ずっと可能性を感じる。私もこんな環境で学び直したい。苦手だった数学を!!!
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