今日胸に刺さった言葉87ー「世界への窓は新聞で閉ざすことができる」「ロシア人を獣にしたのはテレビだと思います」
(2023年10月27日付 朝日新聞 「斜影の森から」ーメディアの沈黙と御用ジャーナリスト 元朝日新聞編集員 福島申ニ氏の言葉)
(タイトルイラストはjp.123rf.comから転載)
◉「世界への窓は新聞で閉ざすことができる」
スタニスワフ・レツというポーランドの詩人の言葉だそうだ。
権力と結んだメディアは民衆の耳目をふさぐ。不都合な情報は伝わってこないし、逆に国内でどんな悲惨なことが起きていても世界に伝わらない。今のロシアや独裁的な国々がそうであるように。
映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」(2019ポーランド、ウクライナ、英)の中には、二人のジャーナリストが出てくるそうだ。
一人はニューヨーク・タイムスの大物特派員でスターリンを称賛し、当時ウクライナで数百万もの人が餓死した大飢饉を知っていながら否定する記事を送り続けた御用記者。ピューリツアー賞まで受けている。
かたやもう一人の無名の英国人ジャーナリスト。「私は口を閉ざさない」とウクライナに潜入して命がけで飢餓の真実を追った人。
この映画監督の言葉:
「この映画のストーリーは現代に直結していると感じました。マスコミの腐敗、政府への権力の集中、人々の無関心さを描いています。この3つが合わさったら非常に恐ろしい」
ー歴史上の悲劇はこの「3点セット」によってもたらされてきた。ロシアにもこの「みごとな三角形」が作られていると。
◉「ロシア人を獣にしたのはテレビだと思います」
ノーベル賞作家のアレクシェービッチ氏の言葉である。
何年ものあいだウクライナへの憎しみを刷り込んで戦争の準備に加担してきたという意味だそうだ。
「言論や表現の自由は最も大切な自由とも言われる。告発も批判も異議申し立ても言葉や映像によってなされるからだ。だから独裁者はまず言論の首を絞めて、意に沿わせようとする」
冒頭のスタニスワフ・レツの警句:
「猿ぐつわの跡は、舌に残る👅」
言論弾圧の記憶ー日本国民は自分で自分に猿ぐつわをはめた歴史がある。いや、それは過去の歴史ではなく、現在でも続いている。放送法への政府の介入に対してメディアは沈黙していた。是枝監督の記事:
今回の政府の放送への政治介入についても、憲法違反であると放送局側はなぜ語らないのかと元BPO委員の是枝裕和監督が苦言を呈している(2023年5月18日付朝日新聞「放送人 政治介入をなぜ語らないのか」)放送局側は萎縮して自己規制しているが、それはひいては、市民の知る権利を奪うことであると。
日本メディアの政治家への対峙の仕方についても、外国人ジャーナリストの目には異様に映っているようだ。その、あまりにおもねる態度に。彼曰く:
日本の記者クラブは閉鎖的で、外国プレスやフリーランスは部外者で、役人の方が「同僚」のように近しい関係のようだ。日本の記者は、権力におもね過ぎている。「アクセスジャーナリズム」=オフレコでリークしてもらう手法。これに頼り過ぎているから表では批判や追求をしない。(2023年9月14日付朝日新聞)
日本のメディアは、Watch Dogとしての使命が果たせているだろうか?