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第130回:大切なのは立ち止まることではなく、前に進むこと。(遊歩新夢:三日後に死ぬ君へ)
こんにちは、あみのです!
今回の本は、遊歩新夢さんのライト文芸作品『三日後に死ぬ君へ』(実業之日本社文庫GROW)です。
好きになった人に自分のことを忘れられてしまう。青春小説でよくあるパターンのひとつだと思います。
日常からちょっと離れた場所での出会いと成長を描いた王道な青春小説ではありますが、その中に描かれた「成長するために必要なこと」に心打たれる物語です。
あらすじ
たった三日であなたを忘れる。それはあなたを殺すのと同じ。
松崎颯真は傷心の旅先で、高校生の岬陽菜穂と出会う。ふたりは互いにほのかな恋心を抱くが、ある日再会した陽菜穂は颯真に関する一切の記憶を失っていた。それは悲しい過去の後遺症によるもので、彼女はどんなに大切な相手でも、三日会わずにいただけで忘れ去ってしまう宿命を背負っていた。苦悩の果て、ふたりは――。号泣必至、愛と絆の物語!
感想
上手くいない自分に悩み、旅に出た浪人生の颯真。旅先で彼は、陽菜穂と早紀という2人の少女に出会います。
陽菜穂は颯真の父が撮影した「グリーンフラッシュ」の写真を大事にしていて、今でもその景色が見たいと願っています。グリーンフラッシュに特別な思いを持っているという共通点があることから、颯真と陽菜穂はすぐに親しくなります。
しかし陽菜穂は数年前に妹を亡くしたことを機に、「どんなに大切な相手でも、三日会わずにいただけで忘れ去ってしまう」(あらすじより引用)ようになってしまいました。
颯真もこの現象に一度巻き込まれたことによって、身近な人に自分のことを忘れられることがどれほど残酷なのかを思い知ります。
昔から陽菜穂を知る早紀いわくこの現象は、陽菜穂の中で勝手に殺されてしまうこと。早紀のこの例え、非常にわかりやすかったです。
これまで颯真は、過去の自分を忘れてリセットするためにグリーンフラッシュを見たいと思っていました。だけど陽菜穂の秘密を知ったことで、この考えは下記の言葉のような気持ちに変化していきます。
過去は過去だ、変わらない。消したとしても事実は残るんだ。だから、僕はグリーンフラッシュを見ることで、前にだけ進もう、と今は思っている。
過去に振り回されて立ち止まったままでいるのではなく、過去を受け入れて前に進むことの重要さに気付けただけで、颯真にとってこの旅は充分に価値のあるものになったのではないでしょうか。
2人でグリーンフラッシュを見る計画を立てて実際に見れたこと。そして、無理だと言われていた陽菜穂を元に戻すことに成功できたこと。これらは颯真が前に進むことを意識したことで得た結果だと思います。
私もかつての颯真のように、過去を忘れたいと思ったり過去の自分の選択を悔やんだりしてしまうことがよくあります。学生時代にこういうことをしておけばよかったなーとか。
でも現実では「過去は過去だ、変わらない」としか言えないし、前に進まなければ人は変わることができないことを颯真の成長からは実感しました。
またやる前から勝手に「無理」だと思い込むのではなく、まずは行動してみることが大事であることも今作からは学びました。
何気なく読んでみた作品ではありましたが、自分を変えるために必要なことを学べた要素もあり、今の自分が読んで良かった1冊でした。
私も颯真と陽菜穂が見たような絶景、いつか見てみたいですね。
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