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「カドブン夏推し」から気になった本を読んでみる!
本好きの夏のお楽しみ、大手出版社による文庫フェア。この前は集英社文庫のナツイチからの1冊(いちご同盟)を読みましたが、今回はKADOKAWAのカドブン夏推しより気になった1冊を読んでみた感想です。
私がカドブン夏推しラインナップから選んだのは、久生十蘭・著『あなたも私も』です。
今をときめくエンタメ作品が充実しているカドブン夏推しですが、今年は昔から読み継がれる名作に触れてみたいと思い、マスキングテープとのコラボカバーも魅力的な今作を選んでみました。カバーで読みたい名作を選べるのも、各社の夏の文庫フェアの楽しいところですね!
『あなたも私も』感想
今作では、売れないモデルをしているサト子という女性が、いつの間にか超大金を巡る騒動に巻き込まれてしまう壮絶な物語が展開されました。
ミステリー・サスペンスといったジャンルにカテゴライズされる作品ではありますが、同時に物語に潜む戦争の面影から「平和」の大切さを改めて感じる内容にもなっていました。
今から70年以上も前の作品ではありますが、作中における戦後のゴタゴタした世間の空気が現代の読者が読んでもわかりやすいように描かれています。1番過去を身近に感じるのは映像でも写真でもなく、もしかすると文章なのかもしれないと今作を読んで思いました。
特にラスト一文の言葉で、私は一気に心を掴まれました。サト子が知った物語のカギである鉱山の真実。そして、サト子を巻き込んだ騒動がすべて終わった直後の静けさ。ラスト一文に込められた平和へのメッセージを読み終え、すぐに「この作品を今読むことができて良かった」と思いました。
また、作中でのサト子をはじめとする女性たちの描かれ方も印象に残りました。当時の女性の生き様・声に対する著者の鋭い視線には、拍手を送りたいくらいです。
サト子はモデルとしての見世物のような自分を気に入らないところがあったし、他の女性たちも世の中の男性に利用され、見えない鎖につながれていたように感じ取れました。作中から聞こえる女性たちの「叫び」には、令和の時代に読んでも深く考えさせられるものがありました。
久生十蘭という作家は今回初めて知りましたが、実際に読んでみてこれからの時代も読み継がれてほしい作家だと思いました。
平和について、そして今の世の中を考えたくなる、この夏の読書に相応しい1冊でした。
(インスタに投稿した今作の感想も貼っておきます!)
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