第145回:「思い込み」ってめちゃくちゃ怖い(芦花公園:漆黒の慕情)
こんにちは、あみのです!
今回の本は、芦花公園さんの『漆黒の慕情』(角川ホラー文庫)という作品です。
この作品は著者の角川ホラー文庫1作目・『異端の祝祭』で活躍したるみ&青山が登場するシリーズの2作目でした。この2人、凄く好きだったので再会できたことがまず嬉しかったです。
個人的には『異端の祝祭』以上に「怖さ」が磨かれていたように感じた今作。日常に潜む恐怖を体験してみませんか?また作品の雰囲気も前作と異なるので、読み比べてみるのもおすすめです。
あらすじ
感想
まず今作では2つの大きな謎が登場します。
ひとつは今作の主人公のひとり・敏彦の身近で頻繁に起きている怪奇現象、もうひとつは小学生の間で広がる「ハルコさん」という都市伝説。
この2つの話題にはもちろん繋がりがあって、明らかとされたそれぞれの真実からは「生きている人間」の恐怖を存分に味わうことができました。
今作で印象的だったのが性別や普段見ている姿からの「思い込み」の描かれ方です。作中のちょっとしたシーンから2つの謎を紐解くカギとなる要素にまで、いたるところで「思い込み」に関するエピソードが描かれていました。
いつも楽しそうな人、誰からも愛される人。でもそれが相手の「本当の姿」だとは限らない。好感度が高いと思い込んでいた相手も自分の知らない場所ではまったく違う顔を誰かに見せているのかもしれません。
このような「思い込み」が最大限に活かされていたのが、ラストにてこれまでのストーリーの中で見逃されていた「ひとつの恐怖」が浮かび上がってくるシーンだと思います。私も最後の最後に今作の本当の恐怖が襲ってくるとは思わなかったので、読後は現実を見逃していたことに対する罪悪感しかなかったです。
あらすじの「振り払っても、この呪いは剝がれない」という言葉は、敏彦の身近で起きていたことではなく「ハルコさん」の件でもなく、ラストでさらっと描かれた恐怖を実は指していたんじゃないか…と読後の今となっては思います。シールのように頭の中に貼りついた思い込みは、剥がすのがとても難しいです…。
今作は「怖さ」の中に、ひとつの物事でも様々な角度から見て考えることの大切さといったメッセージも込められていたように感じました。
3作目が出るのであれば次はどんな題材・怖さを描くのか、引き続き読んでみたいと思います。
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