制服売却で表面化した、私の思いと家族の思い
なんだか心の中でいがぐりのいがが熱々になっているような感覚がある。
その効果で落ち着きなく動き回ってしまう。
今日は制服の話をしよう。
部屋に物が溢れていると感じて、手始めに制服を手放そうと考えた。
状態も良く、この際買い取ってもらおうと決めた。
制服買い取り業界にはこれまで縁がなかったので、検索でヒットした業者が良いのか悪いのか分からなかったけれど、低すぎない価格で受け取ってくれることを条件に定めて、問い合わせをしたり「オンライン査定」を頼んだりして、ある業者を売却先に決めた。
そこでは、売却する制服を会社まで配送する段ボールを売り手が用意することで買い取り価格の上乗せがなされるようだったので、近所に段ボールを提供している店がないか、家族に尋ねた。
これが事の発端である。
私は、もう自分には必要ないのだから、手放すと同時に少しばかり懐が潤えば一石二鳥だな、というように、さくっと考えていた。
しかし家族は難色を示した。
予定していた売り先を告げると、検索したうえで「怪しいよ」と弟が言った。
家計の苦しい家庭に届くように寄付をしたいと、弟と父が口を揃えた。
僕はそれを聞いて、胸に靄が満ちるような思いがした。
なんだろう、
守られて育ってきた人のような。
猥雑な世の中に触れずに、穏やかに一生を終えるような。
そんな印象を受けた……。
僕が、まだ綺麗な制服を前にして、それをお金に換えようと思った背景には、
フリーランスで生きようと決意したことが大きく存在していると思う。
この社会をサバイバルするんだと息巻いていた。
生々しい肉を目の前にしたライオンが、それを淑やかに譲るわけはない。
けれど母も交えて話したとき、制服売却に際する思いは揺らいだ。
私が、売却後の制服の行方には関心が薄いと見て取った母が、
あれはあなただけのものではないのだと言った。
予兆なく語気が強まったので、私の声も大きくなった。動揺した。
ヒートアップした会話が落ち着きを見せた余韻に、父が言った。
不登校をぬけて元気に学校に通うかなって思いながら買った制服を、売った後どうなってもいいなんて言わないでほしいと。
声が潤んでいた。
私はすっと口を閉じて、それから、小さな声でごめんなさいと言った。
私達の大事な部分が、幾重ものカーテンを開けて突然に顔を出した。そんな感じがした。
一人になって考えた。
家族のあの思いは大事にしたい。
それはサバイバルする意気より大事かもしれない。
けれど、わたしは少しだけ気になった。
私達の、差が。