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土曜の午後五時。暗雲の下。雨と霧に覆われた街。雨水はアスファルトを叩き、薄らと溜まり、…
友達が月に引っ越したので、新居を訪ねることにした。 住所は簡単だ。緯度経度いずれもち…
空に巨大な通気口がある。生まれたときからある。 小学生のころ、「あれって、ずっとある…
私の恋人はハレー彗星だ。おそらく私は、地球で最も遠い遠距離恋愛をしている。遠距離恋愛マ…
厳かながら、腹の底が落ち着かない浮ついた空気のなか、期待と緊張が高まり、とうとう教会の…
梅雨の季節でした。 相も変わらず、雨が降っていました。 世界は雨水の匂いで埋め尽くさ…
長らく東京で足掻いていたが、役者として芽が出ず、コロナ禍のダメージが癒えぬまま所属していた劇団が解散を迎えたところで潮時を感じ、地元に戻って家業を継ぐことにした。 うちは酒屋をしている。しかし幼い頃は「子供がお酒に近寄っちゃダメ」「間違えて飲んだらどうするの」と親に遠ざけられ、成人後も酒を嗜むような金銭的余裕・時間的余裕がなかったため、俺には商品に対する知識がとにかくない。 両親は、俺の帰省を喜んでくれた。酒のことも経営のことも一からゆっくり学べばいいと慰めてくれたが、
仕事から帰ると、マンションのドアの前に蟻がいた。俺が今朝、踏み潰した蟻だ。何をしている…
おばあちゃんの左手は海だった。そのことを、わたしはずっと前から知っていた。 毎年お盆…