シェア
早朝六時半の電車に乗り込み、閑散とした車内のシートに腰かけて、流れる車窓をぼんやり眺め…
高校が、苦手になった。人がたくさんいる煩さとか、回答を間違えたときの視線とか、クラスで…
雨降る夜にだけ、光る星があるらしい。そいつは公転も自転も無視して、ずっと南の空に居座っ…
土曜の午後五時。暗雲の下。雨と霧に覆われた街。雨水はアスファルトを叩き、薄らと溜まり、…
友達が月に引っ越したので、新居を訪ねることにした。 住所は簡単だ。緯度経度いずれもち…
空に巨大な通気口がある。生まれたときからある。 小学生のころ、「あれって、ずっとある…
私の恋人はハレー彗星だ。おそらく私は、地球で最も遠い遠距離恋愛をしている。遠距離恋愛マスターとでも呼んでほしい。でも私の遠距離恋愛は、そんじょそこらの遠距離恋愛とは違うので、アドバイスとかは求めないでほしい。 1986年の2月、私は、彼あるいは彼女と出会った。 当時私は7歳で、「いいものを見せてあげるからね」と両親に言われて車に乗せられ、山奥の山奥のさらに山奥に建つコテージと広場に連行された。 後部座席でほとんど眠っていた私は、父親に揺り起こされてコテージに移り、ふ
厳かながら、腹の底が落ち着かない浮ついた空気のなか、期待と緊張が高まり、とうとう教会の…
梅雨の季節でした。 相も変わらず、雨が降っていました。 世界は雨水の匂いで埋め尽くさ…
長らく東京で足掻いていたが、役者として芽が出ず、コロナ禍のダメージが癒えぬまま所属して…
仕事から帰ると、マンションのドアの前に蟻がいた。俺が今朝、踏み潰した蟻だ。何をしている…
おばあちゃんの左手は海だった。そのことを、わたしはずっと前から知っていた。 毎年お盆…