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鯨骨生物群集

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100%趣味で書いている掌編をまとめたものです。
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記事一覧

【掌編12】 陶器の雲

 早朝六時半の電車に乗り込み、閑散とした車内のシートに腰かけて、流れる車窓をぼんやり眺め…

鯨井あめ
2週間前
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【掌編11】 快晴の傘

 高校が、苦手になった。人がたくさんいる煩さとか、回答を間違えたときの視線とか、クラスで…

鯨井あめ
1か月前
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【掌編10】 雨夜の星

 雨降る夜にだけ、光る星があるらしい。そいつは公転も自転も無視して、ずっと南の空に居座っ…

鯨井あめ
2か月前
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【掌編9】 霧の煙草

 土曜の午後五時。暗雲の下。雨と霧に覆われた街。雨水はアスファルトを叩き、薄らと溜まり、…

鯨井あめ
3か月前
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【掌編8】 引っ越し祝い

 友達が月に引っ越したので、新居を訪ねることにした。  住所は簡単だ。緯度経度いずれもち…

鯨井あめ
4か月前
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【掌編7】 世界の秘密

 空に巨大な通気口がある。生まれたときからある。  小学生のころ、「あれって、ずっとある…

鯨井あめ
4か月前
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【掌編6】 彗星の恋人

 私の恋人はハレー彗星だ。おそらく私は、地球で最も遠い遠距離恋愛をしている。遠距離恋愛マスターとでも呼んでほしい。でも私の遠距離恋愛は、そんじょそこらの遠距離恋愛とは違うので、アドバイスとかは求めないでほしい。  1986年の2月、私は、彼あるいは彼女と出会った。  当時私は7歳で、「いいものを見せてあげるからね」と両親に言われて車に乗せられ、山奥の山奥のさらに山奥に建つコテージと広場に連行された。  後部座席でほとんど眠っていた私は、父親に揺り起こされてコテージに移り、ふ

【掌編5】 ウェディングドレスの君は

 厳かながら、腹の底が落ち着かない浮ついた空気のなか、期待と緊張が高まり、とうとう教会の…

鯨井あめ
4か月前
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【掌編4】 ないものねだり

 梅雨の季節でした。  相も変わらず、雨が降っていました。  世界は雨水の匂いで埋め尽くさ…

鯨井あめ
5か月前
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【掌編3】 俺の親友

 長らく東京で足掻いていたが、役者として芽が出ず、コロナ禍のダメージが癒えぬまま所属して…

鯨井あめ
5か月前
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【掌編2】 復讐下手な蟻

 仕事から帰ると、マンションのドアの前に蟻がいた。俺が今朝、踏み潰した蟻だ。何をしている…

鯨井あめ
6か月前
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【掌編1】 左手は海

 おばあちゃんの左手は海だった。そのことを、わたしはずっと前から知っていた。  毎年お盆…

鯨井あめ
7か月前
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