ささやきの森の奥深く
ささやきの森を目指して、ひたすらに自転車を走らせる。
夕方近くなると風は少し冷んやりとしてくる。
途中、黄金色の稲が美しい。
「ささやきの森」は豊島・檀山の中腹にあたる森林の中で無数の風鈴が風に揺れ動き、静かな音を奏でるインスタレーション。
豊島・檀山の中腹にあたる森林の中、無数の風鈴が風に揺れ動き、静かな音を奏でるインスタレーション。
風鈴の短冊には、これまでに訪れた方の大切な人の名前が記されています。風になびく音は魂の神秘性を思わせ、無名の個人を記憶に留め、人間存在の強さや儚さを表現します。
鑑賞者は、新たに自分の大切な人の名前を残すことができます。後日、名前は書かれた文字のまま短冊(プレート)に刻まれ、作品の一部となって風に揺れ動き始めます。
森林までの道のりはなかなかの急勾配。
「イノシシ注意」の標識を見つけた息子が怖がって泣きべそをかきはじめる。
息子をなだめながら、鬱蒼とした森の中をしばらく進むと「ささやきの森」が現れた。
繊細な鐘の響きが幾重にも重なり鳴り渡る。
プレートの短冊がクルクルと廻り続ける。
心地良い空間。
静かな音に心を寄せて、この風景をしばらく見ていると、ふとある遠さを感じた。
この世界が奥深くずっと続いていくような不思議な感覚が静かに染み込んでくる。
これはしばらく失っていた奥行きへの懐かしさなのかもしれないな、と独り合点した。
豊島の作品は自然と呼応しながら存在しているものが多いのかもしれません。
自然の中の作品、作品の中の自然。
人の手による造形が、静かに自然とまざりあい、そして新たなる自然の姿を目の前に見せてくれる…。
そんな魅力を感じました。
お読みいただきありがとうした。