読書会に最適、原稿肥大化の時代の「覚悟の短編集」~斎藤真理子 × 豊崎由美、グアダルーペ・ネッテル『赤い魚の夫婦』(現代書館)を読む~
薄い本に短編5編
『赤い魚の夫婦』は150ページ強の本に、動物(うち一編は菌類)をモチーフとする短編が5本入っています。豊崎さんは「パソコンで書くことが世界中で普遍的となり、原稿が肥大化していく傾向の中で、短く収める作者の覚悟を感じる」といいます。
また、表題作の『赤い魚の夫婦』と『北京の蛇』はパリが舞台で、登場人物もフランス人。韓国でも外国を舞台にした外国人だけが登場する小説が増えている、と斎藤さん。
一方、話の展開は意外と普通で、設定からして独特のマジックリアリズムのような小説とは異なる。「誰が読んでも楽しめる作りなのに、手を突っ込むと底がない」と豊崎さん。
豊崎さんと斎藤さんが語り合うことにより、作品の理解を深めていく行く様は本当に面白いです。「語り合うことで理解が深まる。読書会に最適な本」と豊崎さん。
観賞魚を贈る登場人物に悪意を感じる
表題作『赤い魚の夫婦』はパリを舞台にしたフランス人の若夫婦の物語。「フランス人夫婦の話とはいえ、ラテンアメリカの雰囲気も感じる」と豊崎さん。
斎藤さんは夫婦に、観賞魚ベタ・スプレンデスを贈るポーリーヌに悪意を感じるといいます。斎藤さん曰くベタ・スプレンデスは愛の水中花のような華やかでふわふわした魚だそう。(動画では、自らの体を揺らしてベタ・スプレンデスを説明する斎藤さんがみれます!。)こんな生き物、普通は妊婦には贈らない。
『赤い魚の夫婦』は妻のモノローグ。夫から見ると、別の見方もあるだろうと、豊崎さん。夫のこと、友人の意図など語るポイントが多いという点で、確かに読書会にはうってつけの短編です。
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『ゴミ箱の中の戦争』はゴキブリが登場するのですが、ブラジルの女性作家リスペクトルの『G・Hの受難』にもゴキブリが登場するそうです。ちなみにリスペクトルの『星の時』は月刊ALL REVIEWSでもとりあげています。
このほか、短編5編すべてについて、自称「あらすじ職人」の豊崎さんが紹介するので、動画では、5つの短編の全容もわかります。アーカイブ視聴が可能です。
【記事を書いた人:くるくる】