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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:星彩の運命と情熱 第二十九話 一人と一匹。すでに夫と子供に確定!?

前話

 シェイラとは星の泉で別れた。心強いペンダントを握りしめながらリアナはシルヴァリアに載ってエルダリアンの聖域に向かった。シルヴァリアが高く飛ぶほど地上は小さく見える。シェイラの姿も見えなくなった。一人不安なリアナははしゃげば良いのか黙っていれば良いのかわからず、ただシルヴァリアの背中を見つめていた。
 そんなリアナの肩に柔らかい手がかかった。フィオナだ。
「怖いのね。親友なんだもの。それぐらい解るわ。でもシェイラさんが言っていた。仲間がいるって。一人で試練に立ち向かうならそう言わないわ。一緒に試練に立ち向かえるのよ。ただ、意思決定があなたに任せられただけで」
 知ったフリして……。などと言えるはずも無かった。確かにフィオナの言うとおりなのだ。シェイラは一人で試練に立ち向かった。だが、リアナには仲間がいるとはっきり言った。どういう状態になるのかはわからないが、前向きに捕らえた方がきっといい。脳天気なほどがちょうど良いのだ。
 そう思っているとセレスがちょこちょことやって来て服の袖を引っ張る。それだけでリアナの表情が和らいだ。ほっとするフィオナとマルコだ。後はセレスとセイランに任せておけば良い。それぐらいの心の絆が二人の間に生まれていた。ただ、素直でない二人は認めていないが。

 やがて夜になり、リアナとフィオナは小屋で眠り始めた。男達は外で寝ている。空路ならば危険は少ない。今は暖かい時期だ。外で寝ていても風邪など引かない。
 ふと、夜中にリアナは目を覚ました。上着を羽織って外に出る。そこには炎のアミュレットを手で遊ばせていたセイランがいた。
 セレスがまたちょこちょこと歩いてやってくる。
「あ。セレスちゃん」
 セレスは大方雛から離れて親鳥のようになっていたが、この「セレスちゃん」は変わらなかった。シルヴァリアには名前だけでちゃんも君づけもしないが。まぁ、長い名前で全部を言ってさらにちゃんなどと着けば長ったらしい。そういうことでシルヴァリアは「シルヴァリア」と呼んでいた。

 この子にも愛称を作ってあげないと。
 
 ふいに、シルヴァリアに思う。
 
 シルヴィ、とかならいいかしら。

 セレスと手で遊びながら考える。
「眠れないのか?」
「え?」
 見上げうるとセイランがリアナの前にいた。
「まぁ。そうだけど、この子、シルヴァリアにも愛称をつけてあげないとって考えていただけよ」
「それだけではないだろう? 試練のことで心がざわついている。大丈夫だ俺とセレスがちゃんと側にいる。セレスは俺よりもお前に懐いているからな」
「世話をちゃんとしなかったからでしょ。今からでもおそくないわ。きっちりパパになってあげればいいのよ」
「そうしたいが、それ以上にリアナの思いがセレスに伝わっている。俺の思いなんて微々たるものだ」
「そんな事無いわよ。ねぇ。セレスちゃん。パパの事大好きよねー」
 みゃー、とセレスは鳴く。そしておもむろにセイランの服の袖を引っ張る。そしてひたすらみゃーみゃー鳴く。
「どうしたセレス」
 ただ、ひたすらにセレスは鳴く。
「そうか」
 一言言うとセイランは突然リアナを抱きしめた。
「セ、セイラン?」
「セレスがそうしろと言ってきた。俺をお前の夫にしてくれないか? まぁ、結婚するのはもっとずっと後だが」
「当たり前よ! この年で結婚なんて犯罪だわ!!」
 そう大声を出しながら、リアナの瞳から涙がぽろぽろあふれてきた。
「大丈夫だ。未来の夫と子供のセレスがいるんだ。この絆は消えない。試練はリアナ一人に課せられたかもしれないが、俺はリアナの側にいいる。セレスと共に。ママを一人きりにはさせない」
「ちょっと、夫と子供って私にも選択肢はないの?」
「ない」
「うなーん」
 一人と一匹が同時に言う。
 
 この年で未来の夫と子供が決まるだなんて、不条理だわ!
 
「だから、不条理でも何でも無いの」
「また、人の心を読む!」
「聞こえてくるもんはしょうがないだろ」

 神様、いえ、シェイラさんー。この事態を収拾してー。

「ならんな」
「うなうーん」

 こうして若き恋人達はにわか親子になった。
 
 デートぐらいさせてー。
 
「使命が終わればいくらでも」
「セイラン~」
「うな~ん」
「もうっ!」

 シルヴァリアはまだ空路を飛んでエルダリアンの聖域に一路向かっていたのであった。


あとがき
週末朝活の時間を利用して昨日に引き続き星彩の執筆。無事朝に更新できます。次は「風響の守護者と見習い賢者の妹」の執筆ですがしばらく時間は空きます。午前中はほぼ小説の執筆時間はないので。三十分ぐらいの確保なので。午後の更新となります。 
 すみませせん。
 もはや意識がもうろう。この辺で閉めます。
 ここまで読んで下さってありがとうございました。

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