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ヘッセの読書術|ヘルマン・ヘッセ
この世のどんな書物も
きみに幸せをもたらしてはくれない。
だが それはきみにひそかに
きみ自身に立ち返ることを教えてくれる。
そこには きみが必要とするすべてがある。
太陽も 星も 月も。
なぜなら きみが尋ねた光は
きみ自身の中に宿っているのだから。
きみがずっと探し求めた叡智は
いろいろな書物の中で
今 どの頁からも輝いている。
なぜなら今 それはきみのものだから。
ヘッセはずっと「自己を見つめよ」と説く。
『ロゴスと巻貝(小津夜景)』でこの詩に出会い、『デミアン』『シッダールタ』を経てやっとここに戻ってきた。
再びこの詩と向き合う。
はじめて出会ったときと違うのは「きみ自身」の言葉の重み。
この重さを重さとして感じさせずに、変わらず優しい。
あなたに認識や覚醒をもたらしてくれた詩人は、光でもなく、たいまつをかざす者でもありません。せいぜいそこを通って光が読者にとどくことのできる一つの窓にすぎません。(略)
彼の役目はあくまでも窓であること、光の邪魔をしないこと、光に対して心を閉ざさないという点にあります。
作者や書物に盲目的になってはいけない。
書物はあくまで出発点であり、刺激となるものである。
世界を解釈してもらうために読むのではない。
自分で解釈するのだ。
教養のためなどではなく、たわむれるのだ。
子供の頃、布団を洞穴やトンネルに見立てて遊んだように。
自分の中に取り込んだら一度壊せ。
そこから自分で組み立ててみよ。
正解も間違いもない。
怖がることはなにもない。
なぜなら今 それはきみのものだから。