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イワンのばかと杜子春

ある日、満島ひかりさんが『イワンのばか』を紹介していた。
またある日、バイク川崎バイクさんが『杜子春』を紹介していた。
本紹介、大好物です。

『イワンのばか』
悪魔があの手この手で陥れようとするが、イワンは兵も金もいらない。 朝晩コツコツ働いて暮らし、「そうか、よしよし」と悪魔にさえ分け与える。 なにを奪われてもかまわない。また実直に働くだけ。 悪魔お手上げ、という話。

イワンはすごい。これなら世の中戦争なんか起きない。どうしてこうならないのかな。
しかし感想文は難しいと思って保留。

『杜子春』
仙人に大金持ちにしてもらった杜子春は、金が尽きると離れていく人間に愛想を尽かし仙人の弟子になりたいと申し出る。「声を出さない」と約束して地獄で拷問に耐えていたが、父母が痛めつけられ黙っていることはできなかった、という話。

「もしお前が黙っていたら、おれは即座にお前の命を絶ってしまおうと思っていたのだ。──お前はもう仙人になりたいという望みも持っていまい。大金持ちになることは、もとより愛想がつきたはずだ。ではお前はこれから後、何になったらいいと思うな」 「何になっても、人間らしい、正直な暮らしをするつもりです」

杜子春

人間らしい、正直な暮らし。
あれ、なんだか、イワンの生き方じゃないか。

「うちの妹は、手にたこのできていないひとは食卓へつかせないことにしているのです」

イワンのばかとそのふたりの兄弟

元金持ちの息子→貧乏→金持ち→貧乏→金持ち→仙人(未遂)。
杜子春は極端がすぎるし、どれもが自分の手を動かしていない。
かたやイワンはなんやかんやで王さまになっても、変わらず百姓仕事を続けている。

脈絡なく興味をもって選んだ二冊だったのに、真逆な主人公でありながら同じテーマ。
ーー手にたこをつくって働いてみろという示唆でしょうか。

去り際の仙人のイケメンぶりにやられる。

鉄冠子はこう言ううちに、もう歩きだしていましたが、急にまた足を止めて、杜子春の方を振り返ると、 「おお、幸い、今思い出したが、おれは泰山の南の麓に一軒の家を持っている。その家を畑ごとお前にやるから、さっそく行って住まうがいい。今ごろはちょうど家のまわりに、桃の花が一面に咲いているだろう」

杜子春

余談。
畜生道にまで堕ちた杜子春の両親。生前の悪行がどれほどのものだったのか興味深い。