【溺れる君】《小休止》ファーストコンタクト……次男編
本編
朝日家に就いた陽太と少年。
「楽園に着いたよ、マイハニー」
陽太が耳元で囁き、首筋にキスを落とす。
くすぐったいのか、身じろぐ少年に笑みを溢した。
「らくえん? あほ……そいつがいくのはじごくや」
2人の目の前に現れたのは寝ているはずの真昼。
髪の黄緑と同じ色のつなぎの上にまた同じ色のロングコートを着て、そのポケットに手を入れ、睨み上げていた。
「予知って厄介だね」
「ええからそいつをおけ」
「イヤだって言ったら?」
陽太は片目を赤くした。
「おまえがぼくぅにそのめをむけるとはなぁ。そいつになにされたん?」
真昼は黄緑の目に変わり、ギッと少年を見つめた。
すると、少年がいきなり重くなったから陽太は手を離してしまった。
力なく落ちた少年は顔はボコボコ、身に付けていた服は所々裂けたり破けたりしていて血が滲んでいる。
その姿にギョッとする真昼。
「こいつ、ほんまにおんまえのやつか?」
「本人がちゃんとそう名乗ったから間違いないよ」
なんで?と軽く言う陽太に真昼は拍子抜けする。
「おまえにしてははでにやりすぎなきがする。あくまのめでいっぱつやんか」
「その目に手を伸ばしてきたんだよ、この子」
真昼ははっ?と信じられないようで目を見開く。
「朝日だ、綺麗だって嬉しそうに笑ってたよ」
鳶色の瞳に戻った陽太はふふっと笑って少年から離れた。
「そんな憎いならさ、マーにぃ。殺してあげてよ」
陽太は見物するように腕を組む。
「頭の傷、つけられたんだよね。 復讐してやったら?」
陽太は三兄弟の中では一番慈悲がない。
あれほど大切そうに抱いていたのに、もう見捨てたようだ。
「あな、たも……御前家に、うらみが、あり、ますか?」
途切れ途切れに掠れた声で言っているのを聞いた真昼はその方を向く。
少年が腫れた目を少し開けて、真昼に問いかけていた。
真昼は口元を歪ませて近づいていく。
「ありすぎるくらいやわ。いま、かえしてやるからなぁ」
真昼は黒いマニキュアを塗った手を伸ばし、少し上に上げた。
すると、少年の身体が勝手に持ち上がり、あごを見せた。
真昼はニヤッと笑い、手を強く握った。
少年の身体は電気を浴びたようにブルブルと痙攣し始める。
でも、少年は目を閉じたまま黙っている。
真昼はより力を込めてみた。
やはり、少年は喚かないが、血行が良くなってきたのか服の血の染みがだんだん大きくなってきたのだ。
真昼は怖くなって手を力なく下ろす。
「こんなもんで、いいんですか?」
少年は余韻でピクピクと震えながらも、笑っていた。
「おまえ、そのままやとたりょうしゅっけつでしぬねんで!」
なんで平気そうにしているのかわからず、真昼は叫ぶ。
「チならだいじょうぶです。ねぇ、ピンクさん」
「はーい。俺が綺麗に全部吸ってあげるさ」
陽太は少年を優しく抱えて座り、ボロボロの服を破っていく。
そしてチュプチュプと吸い始める。
「なに、してんねん」
予測出来ない2人行動に真昼は呆れたように聞く。
「チをすいつくして、カワとニクはたべて、ホネは御前家におくっていただけるとヤクソクされましたので」
すらすらと語る少年を見て、真昼は恨んでいたのがバカらしくなってきた。
「そんなことをいって、ゆるされるとおもうなよ」
キッと睨む真昼に少年は空っぽの瞳で見つめる。
「ゆるされようとはおもっておりません。ぼくはずっとくるしめられるだけですから」
さぁ、どうぞと言って少年は口角を上げた。
「よう、どうにかしてくれ」
真昼は陽太に助けを求める。
「遠慮なく殺したらいいじゃん。その後、俺がもらって永遠に俺のものにするから」
右手で少年の頭を撫でて、ふふふと笑う陽太。
続き