LGBTQの人による『プライド・マーチ』。「差別と偏見を無くしたいー」という想い。
こんにちは、翼祈(たすき)です。
『プライド・マーチ』とは、LGBTQ文化を讃えるパレードです。『プライド・マーチ』の前後に行われるイベントを含めた総称を指す言葉としても使われます。
各時代における法的権利を求めるLGBTQの社会運動の場ともなってきました。イベントは世界中の様々な都市で、ストーンウォールの反乱を記念し、毎年6月を中心に行われています。
今回は世界3都市で行われた、『プライド・マーチ』について考えていきます。
2022年6月、アメリカでの『プライド・マーチ』
アメリカでLGBTQの人の権利が脅かされています。性自認を問題視し、教育を制限する活動が浸透し、LGBTQの人の権利擁護イベントに反対する、白人至上主義者による妨害計画も発覚しました。多様な暮らし方や性を選択することに否定的な風潮は人工妊娠中絶の権利を覆した連邦最高裁判決にも現れています。ニューヨーク市で3年ぶりに、LGBTQのパレード『プライド・マーチ』が開催されました。
2022年6月26日、ニューヨーク中心部マンハッタンが多様性のシンボルである虹色に一杯となりました。目抜き通りの5番街を旗やプラカードを持って歩く数万人の参加者が次々と行進しました。トラックの荷台やバイクに乗ったパフォーマンスや、奇抜な衣装や上半身裸の姿で走り回るなど参加者のPRの仕方は十人十色です。
「今日は LGBTQ関係なく、全員で祝福する日だと思います」。自身を男女どちらかに分類しない人や性的少数者全体を表す「クイア」だというAさんは、『プライド・マーチ』に参加する喜びを説明しました。
『プライド・マーチ』は、1969年6月28日にニューヨーク市内グリニッジ・ヴィレッジのゲイバー「ストーンウォール・イン」に立ち入り捜査した警察に客らが反発した、数千人規模の暴動「ストーンウォール暴動」を記念し、翌年の1970年よりスタート。それ以来、LGBTQの権利向上を提唱する恒例行事となりましたが、新型コロナウイルス感染拡大後でこの2年間は本格的な『プライド・マーチ』は開催できていませんでした。
『プライド・マーチ』の参加者らは「本当のあなたの姿には底のない価値に満ちてる」などと訴え笑顔で行進しましたが、LGBTQを取り巻く状況は日々悪化しています。
『プライド・マーチ』はLGBTQの権利だけではなく、反人種差別など色んな人権を訴える場としても歴史を歩んできました。今回は『プライド・マーチ』開催の2日前の6月24日に、保守派判事が多数の最高裁が、女性の妊娠中絶を憲法上の権利として容認した半世紀前の判断を否定しました。この最高裁の判断は2015年に認められた同性婚の権利の見直しにつながるかもしれないとの懸念もあります。
自身をレズビアンと自覚して初めて『プライド・マーチ』に参加したBさんは「最高裁の判断は人権全体への危機の第一歩となります。私は誰かの権利を剥奪することで成り立つ正しさを認めません」と語りました。
2022年7月、ハンガリーの『プライド・マーチ』
2022年9月、札幌での『プライド・マーチ』
2022年9月17日・9月18日の2日間、「さっぽろレインボープライド2022」が、レインボーストリートで開催されました。
札幌では、1996年、東京に続く日本で2番目となる『プライド・マーチ』として「レズ・ビ・ゲイ プライドマーチin札幌」が開催されたことが皮切りに、1999年には「レインボーマーチ」とイベント名を変更し、2013年の「レインボーマーチ札幌ファイナル」まで、トータル16回の『プライド・マーチ』が開催されました。
2017年には、「さっぽろレインボーマーチ+」というイベント名で、従来とは違う新しい団体が1度だけ行いました。札幌での『プライド・マーチ』を継続的に開催したいと有志が結束し、「さっぽろレインボープライド実行委員会」を発足したことによって、2018年10月7日、第1回となる「さっぽろレインボープライド2018」が開催できました。
2021年はオンラインでの『プライド・マーチ』の開催でしたが、2022年は会場でのリアル開催。2日間の日程での開催は初となります。「さっぽろレインボープライド2022」のフィナーレには、好きな様にシャボン玉を吹いてもらう「シャボン玉リリース」を実施します。シャボン玉は持参が必要となります。
参考:「さっぽろレインボープライド2022」 今年はリアルで初の2日間開催 札幌経済新聞(2022年)
「さっぽろレインボープライド」では、地域社会での、身近にLGBTQが暮らしていることを広く認知させたり、孤立するLGBTQの人が自分の存在を肯定できるような情報を届けたり、自己肯定感を高めることを掲げたり、LGBTQが存在することが当たり前の社会制度の構築を行政や教育現場、企業など幅広く社会全体に提言するすることで、多様性を重んじ、個性を尊重し合う豊かな社会の発展が目的です。
アメリカの『プライド・マーチ』で考えさせられること
アメリカの南部フロリダ州では2022年3月、「ゲイだと話してはいけない法律」が成立。フロリダ州の公立学校で小学3年生以下の子ども達にゲイやトランスジェンダーなどに関係する教育を実施することが禁じられました。児童が性自認などに関係する相談を寄せたり、心のケアを受けたりした時には、学校が保護者に通知を出すことも求めているとされ、子どものプライバシー侵害も指摘されています。
同様のLGBTQに関係する法案の提出は、自身のお子さんがLBGTQになるのを危惧する保護者など保守層の支持をベースに、共和党の優勢な南部諸州で続いています。『プライド・マーチ』の列にいたCさんは「吐き気がするよ。自分が愛したい人を愛せないなんて。LGBTQの権利を訴える姿を観衆に見せ、私たちの声を轟かせる必要がある」と非難しました。
コロナ禍は色んなLGBTQの人への差別を悪化させました。紛争監視の非営利団体ACLEDによりますと、デモや暴力を併せた反LGBTQ活動は2020年の15件から2021年に61件まで倍増しました。アメリカの西部アイダホ州では2022年6月、現地のLGBTQイベントで暴動を計画していた白人至上主義団体「パトリオット・フロント」の武装した参加者ら約30人が事前の通報で逮捕されました。
この様に海外では反LGBTQの人は危害を加える恐れがあり、逮捕されるケースが相次いでいます。もう一度、LGBTQの人の人権について見つめ直してみませんか?