「ケミカルリサイクル」。マイクロプラスチックを分子レベルにまで分解し、再利用!
こんにちは、翼祈(たすき)です。
マイクロプラスチックによる、人体への影響が止まりません。
マイクロプラスチックは、高分子化合物の破片で大きさは1µm(マイクロメートル)〜5mm未満。物理的に磨耗したり、科学的に分解したりすることで大きかったプラスチックが変化していき、形成されます。
1リットルのボトル入り飲料水には、平均値で24万個のプラスチック粒子が含んでいると言われています。
2024年6月19日、アメリカのマイアミ大学は、ヒトの生殖器から、マイクロプラスチックが検出されたと明らかにし、その研究成果は、学術誌[IJIR:ユア・セクシャル・メディスン・ジャーナル]にて公開されました。
私は母乳や血液からマイクロプラスチックが検出されたという話は知っていましたが、臓器でも恐らく、と思いながらも、ショッキングな話でした。
この記事では、そんなマイクロプラスチックを分子レベルまで分解しようとする、まだ余り知られていない、プロジェクトとなります。
2024年度、神奈川県にある川崎港周辺で回収したマイクロプラスチックごみの再資源化を促進しようと、東京都港区にある素材大手「レゾナック・ホールディングス」と川崎市は、回収したプラスチックごみをガス化し、CO2や水素、アンモニアにリサイクルする実証実験を実施しています。
川崎市が臨海部のレゾナック事業所などと連携し、循環型社会の実現を目指すプロジェクト「ケミカルリサイクル」です。
今回は、凄い技術の「ケミカルリサイクル」の詳細を解き明かします。
「ケミカルリサイクル」概要
川崎港では川崎市から業務委託を受けた公益社団法人「川崎清港会」の海面清掃船が平日は毎日、港近くのおよそ3300ヘクタールの水面を巡回し、ペットボトルやバケツ、ポリ袋などのごみを引き揚げ、分別していきます。
回収の担当者は「不法投棄と思われるものも多くあります」と嘆きました。
実証実験で再資源化されるのは「川崎清港会」が回収したマイクロプラスチックのごみで、臨海部にあるレゾナック川崎事業所に運んでいます。そこで、高温のガス化炉の中で分子レベルにまで分解する「ケミカルリサイクル」を実施しています。
全国的にもまだ珍しい再資源化のやり方で、「レゾナック・ホールディングス」のプラスチックケミカルリサイクル推進室長の男性Aさんは、「違う種類のプラスチックが混入していても再資源化できるのが、このプロジェクトの強みです」と、声を大きくします。
2024年5月30日、事前に用意していたマイクロプラスチックのごみ20kgを破砕成形機にかけ、ガス化炉に投入しました。レゾナック川崎事業所では首都圏の家庭などから出されたプラスチックごみ1日195tを再資源化し、490tのCO2、30tの水素を取り出し、空気中の窒素と、水素を合成して175tのアンモニアを作ります。
アンモニアはアクリルやナイロンという医薬品や繊維の原料、CO2は、炭酸飲料のドライアイスや炭酸などに使用されています。
水素の一部は、地下のパイプラインを介しておよそ5km離れた「川崎キングスカイフロント 東急REIホテル」に供給され、燃料電池による発電で、ホテル内の電気の一部をまかなっています。
参考:川崎港に浮かぶプラごみ、高温分解する「ケミカルリサイクル」で水素やアンモニアに再資源化 読売新聞(2024年)
2024年度の「ケミカルリサイクル」の実証実験では年度内に計4回、トータル80kgのマイクロプラスチックのごみの再資源化を実施する予定で、事業拡大への課題や、技術的な検証などを模索します。
川崎市環境局の廃棄物政策担当課長の男性Bさんは、「レゾナック・ホールディングスと力を合わせて、マイクロプラスチックをどこまで再資源化できるか確認したいです」と主張しました。
マイクロプラスチックより怖いもの
それはナノプラスチックです。
ナノプラスチックとは、微細なプラスチック粒子とされるマイクロプラスチックよりさらに小さいプラスチックの粒子のことを指します。プラスチックが劣化で断片化し、マイクロプラスチックが生成される過程でさらに生成されていきます。
ナノプラスチックは、粒径1nm(ナノメートル)~1µmの粒子、粒径1~100nmなど複数の意見がありますが、物質の性質から粒径1µmのプラスチック粒子として定義される場合が多いです。
ナノプラスチックの粒子は小さいことから、空気中にも浮遊し、呼吸をすることで肺から肺胞壁を通過して、毛細血管に侵入することが明らかとなっています。形状によっては、肺組織に刺さって長い渡り停滞するという説もあるほどです。
東京農工大学の研究チームによる分析では、複数の人の血液中から、ナノプラスチック粒子が含まれていることが解明しました。
さらに、肝臓・腎臓や血液などからプラスチックに添加するポリ塩化ビフェニール(PCB)や紫外線吸収剤が発見され、ナノプラスチックによる有害物質の蓄積が示されたカタチです。
ナノプラスチックは、肉眼でとらえられない大きさです。そのことで、微小なナノプラスチックは、さらにマイクロプラスチック以上に深刻な影響があるのではないか?と専門家は警鐘を鳴らしています。
最後の感想は少し怖がられてしまったのかもしれませんが、「ケミカルリサイクル」が分子レベルまで分解するなら、ナノプラスチックも恐らく分解できると思います。
日本だけでなく、世界中でこの「ケミカルリサイクル」の技術は必要だなと感じました。