「その間だけは、色んなことを忘れられるから。」
1ヵ月に1回は、そういうことがある。
ぼくが、どうしようもなくなること。
どうしようもなく、目の前がちかちかすること。
思い出したくないものが、光景が、目の前で。
それは、ふいに訪れて、すぐに消えてくれることもあるけど。
どどど、と土石流みたいに、記憶がなだれ込むこともあって。
そんなときのぼくは、被害妄想が強くなりすぎて、疲れることがあって。
(そんなことはないと、わかっていても。)
寝不足だったのも、あると思う。
(前日に、ほとんど眠れなかったから。)
本当は、友人(珈琲屋)のところに、コーヒー豆を持って行こうと思っていたのだけど。
眠すぎて、どうしようもなかったので、朝の、何時か忘れてしまったけど、気絶するように眠っていた。
だから、目が覚めたとき、今日はもう、なにもできないのだな、と悟った。
どうしよう、と思った。
まだ眠りたい、とも思った。
ぼくは、それほど眠れなかったし、眠ることに逃げていたかったのだと思う。
でも……。
ああ、そうだ。そろそろ、振り込むをしないといけない。
15,000円。1ヵ月に1回。「ぼくを生んだ人間」に。
目標金額に達したら、今度こそ絶縁できるだろうか。
(せびられているわけじゃない。奨学金の返済、みたいなところ。)
ATMから出てきた明細書を、「ぼくを生んだ人間」の明細書を握りつぶして、すぐに捨てた。
こんなもの、持っていたくない。
目にしたくないし、触れていたくない。
それも、きっかけだったのかな。
ぼくが、底まで落ちていったことの。
その後、バスが来るまでの時間を、近くの書店で潰すことにした。
注文していた本が、入荷したこともあった。
今井むつみ先生の『ことばと思考』を受け取って、併設のカフェに移動した。
ぱらぱらとめくってから、持参したビオリカ・マリアン先生の『言語の力』を開いて、マーカーのキャップを外した。
このごろのぼくは、心理言語学に関心があって、少しずつ勉強している。
新書コーナーで、トラウマに関する本(大抵は、治ると謳っているもの)を見るだけで(あろうことか、ヒントが欲しくて、覗くこともある)息苦しくなる。
そんなときに知った。
単純に、心理学も言語学も関心があるから、二つがくっついた(?)心理言語学があることを。
それから、しばらくして、思った。
自閉症スペクトラムで、鬱病で、喋り方がおかしくて、言語能力と数学(というより)能力が乖離している(知能テストで発覚)ぼく。
そんなぼくを、サンプルにして、研究したら、どうかと。
なんか、話が右往左往したのだけど。
ぼくは、どうしようもないのだけど。
……。
まあ、勉強するか。
その間だけは、色んなことを忘れられるから。