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「カップルらしい会話」 #とは

帰りが遅くなったので、カットリンゴと、リンゴジュースを買った。


ラインナップが、バカみたいだなあ、と思った。


パートナーは、カップそばを選んでいた。


ぼくは、少しだけ息切れしていた。


直前まで、いっぱい喋っていたから。


ぼくとパートナーは、その前に、ふたりでお茶をしていた。


すでに夜になっていて、店内も薄暗く、いわゆる、いい雰囲気の喫茶だった。


ぼくらは、お茶をするとなったら、ふたりとも本を持って行く。


もちろん、読むために。


だから、終始静かに過ごすこともあれば、本で気になったところを共有して、そのまま話題があっちへ行ったりこっちへ行ったり、会話がものすごく展開することもある。


昨日は、後者だった。


ぼくは、和泉先生の『悪い言語哲学入門』を借りたばかりだったので、それを読んでいた。


冒頭から、とてもおもしろいので、逐一共有するようなことをしていた。


(席について、最初の数十分は、それでも静かにお茶をすすっていたんだけど。)


途中で、後ろの方から、見知った顔が近付いてきた。


知人だった。ぼくが、言語学に興味を持ったきっかけでもある。


知人と、その知人がふたりで、ぼくにはよくわからない、カメラを携えていた。


知人たちは、ぼくらの隣のボックス席についた。


始めに言っておくと、知人はとても話が上手で、おもしろい。


最初の方こそ、向こうの方が、こちらにまで会話が聞こえてくるくらい、だったと思うんだけど。


紆余曲折あって、ぼくらの会話の話題も、捻じれに捻じれて、


「医療福祉現場における『ニーズ』と『デマンド』の違いとは何か」


になった。


ぼくは元、パートナーは現在進行形で、医療従事者だ。


ぼくはその二つに馴染みがなかったけど、パートナーはずいぶん悩まされていたようだった。


だいぶヒートアップしたので(語弊を生むので恐縮だけど、喧嘩はしてない)気付けば声も大きくなっていた。


いや、楽しかったけども。ぼくらは。


帰り際、隣席の知人たちに謝罪した。気遣いじゃなく、本当に気にしていないみたいだったけど。


ぼくとパートナー、帰りの車内で、ふたりで大反省したのだった。


以前も、べつのお店で、隣席に座っていた女性2人組が、ぼくらが思考実験の話を始めた辺りから、急に静かになったことがあった。


(話に一区切りがついたころから、彼女たちは、また賑やかになったけど。)


楽しいのは、楽しいんだけど。


うっかり、周囲に迷惑をかけるのはよくない、と思った。


いや、常々思ってはいる。何度も失敗しているけど。


……でも、楽しいんだよなあ。

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