「結局のところ、今年も去年と同じだな、」

今日もまた、ずいぶんと眠い。


そう思うようになって、何日経っただろう。


寝つきはましになって、中途覚醒もしない。


それなのに、朝になっても、すこぶる眠い。


夢を見たような気もするし、見ていないような気もする。


おかしいな。睡眠薬も、欠かさず飲んでいるのに。


どうして、こんなに眠いんだろう。


いつまで、こんなに。


どんなに眠くても、なぜか、二度寝はできない。


それも、苦しくなる要因だ。


眠気が覚めることが、できたらいいのに。


それも、できないなんて。


その日は、コーヒー豆の焙煎をしようと思った。


コロナに罹っていたこともあって、しばらく手を付けていなかった。


ようやく、と思って、手廻しの焙煎機を組み立てていくと、ナットがないことに気付いた。


いつも、同じ場所にあるはずのもの。


ない……。


ただ、この焙煎機の専用部品じゃないので、ホームセンターで事足りるのが、不幸中の幸いだった。


すぐに買い出しに行って、慣れない売り場でさ迷って、時間をかけて見つけ出した。


平日だから、ずいぶん空いていたけれど、まれにすれ違う人たちは、大抵作業着のようなものを着ていた。


仕事で、必要なものですか？


その人たちとすれ違い、ところどころに散らばっている店員を見つけては、みんな働いている、と思った。


ぼくと違って。


ぼんやりしながら、家に帰った。


ぼくは、よくぼんやりするけど、たぶん、自己嫌悪をぼやかすためでもあるんじゃないかと、ふと思った。


買ったばかりのナットを消毒して、焙煎機を組み立て終え、そのまま始めることにした。


焼き立てのコーヒー豆は、甘い匂いがする。


片付けて、記録を付けて、掃除をして。


夕方になっていた。


お腹が空いていた。食欲はないのに。


米びつは空になって、米はどこにも売っていない。


外。


外に出ようかな。


すでに、ホームセンターには行っていたけど。そのときは、もう忘れていた。まあ、あれは、用事だから。


ときどき、咳の発作が出るぼくは、どうしてなのか、外気の方が、出にくかったりする。


ぬるい空気の方が、気管にやさしいんだろうか。


なんでもいいか。苦しくないなら。


自転車のタイヤの空気を入れ直して、張り具合を確かめる。


そういえば、今年もサンダルを買わなかったな、と思う。


買えばよかった、と思う内に、夏が終わっている。


結局のところ、今年も去年と同じだな、と思った。