たくさんの人を見たり、だれかと話したりした日
色んな人に会った日だった。
会った、というか、その場に居合わせた、というか。
新しいコーヒー屋ができる、と聞いていたので、電車に乗った。
オープン日だったので、ずいぶん混んでいた。
急がないといけない理由もあるので、いつまでも待った。
新しいコーヒー屋、といっても、彼は、どこかしらのイベントでよく出店していたので、ぼくもときどき行った。
とはいえ、最後に彼が淹れたコーヒーを飲んだのがいつだったのか、覚えていないくらいだったので、彼の方はぼくを覚えていなかった。
オープンしたことは、あまり公にされていなかったので、客のほとんどが知り合いか、SNSで一度だけされた告知を見た人がほとんどのように見えた。
(ぼくは、後者の方。もしくは、彼の知り合いの知り合い。)
どこに潜んでいたのかと思うほど、おしゃれというか、独特な雰囲気を纏った人で、ひしめき合っていた。
知り合いでもなく、おしゃれでもないぼくは、なるべく隅の方で、その光景を眺めていた。
イートイン(ドリンクイン?)もできたけど、混んでいたのでテイクアウトにした。コーヒーが来るころには、店内はだいぶすいていた。
外に出ると、丁度よく翳っていた。注文したのがホットコーヒーだったから、よかった、と思った。
それから、数ヶ月ぶりに、知り合いの本屋に寄った。
コロナだったので、なかなか外出できなかった、という話をすると、その場に居合わせたほぼ全員が、一度は罹ったことがあるらしく、しばらくその話になった。
しばらくして、以前その本屋が主催した歌会に参加していた人が、コーヒーの話をした。一回り上の男性で、歌会のときは、あまり積極的に発言はしない人だった。
会社にコーヒー好きがいるのだけど、こだわりが強く、そこまで詳しくない自分は、「なぜ、こんなことも知らないのか」みたいになじられることがある、という話だった。
ああ、ぼくの嫌いなタイプの人間か、と思った。
市販のインスタントコーヒーと、それを飲む自分は見下されている、という旨のことも言っていたので、企業努力を嘗めるなんて愚かだ、あなたはなにも悪くない、みたいにぼくは憤慨した。と思う。
コーヒーに限らず、こだわりが強すぎるあまり、なにかを貶めて、なにかを称えるような考えの人は、好きになれない。
彼は、いい話が聞けた、と言ってくれた。ぼくは、勝手に憤慨したことを反省した。でも、コーヒーの淹れ方に優劣はないこと等は、伝えられてよかった。
あまりにひさしぶりに、たくさん話したせいで、少し疲れた。でも、いい時間だったな、と思えた。