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本屋大賞作家から話題の新人まで:7月に読んで良かった本【厳選7冊!!】

こんにちは。藍沢 迷あいざわ まよいです。

7月はとにかく豊作でした!
新たな本と出会い、そして新たな視点を与えてくれる7冊をご紹介させてください!★は個人的なおすすめ度合い。

①「正しさ」の裏側にある、切ない愛の行方★4.3

◆『流浪の月』凪良ゆう(2019/8/29発売)
2020年の本屋大賞作『流浪の月』を読んだ。一体どうしてこんな物語が書けるのだろうか。激しく嫉妬してしまった。映像を見ているかのような情景描写の美しさ、登場人物たちの微妙な心の動きを捉える筆致。優しさだけではない現実に切り込む鋭利さ。一見すると、更紗と文の関係は常識からは外れている。しかし、常識や価値観と折り合いをつけられない個人の感情に光を当て、社会の偏見や善意の押し付けがいかに人を傷つけるかを鮮やかに描き出している

本作を読み、「人生は固定観念にとらわれず、自分の意思で選び取るものだ」というメッセージを受け取った。世の中に平凡な人は一人もいない。それぞれが自分だけのドラマを生きている。この作品は、そんな個々の人生の尊さを教えてくれる。

✴︎おすすめの読者層

  • 社会の常識、「普通」や「正しい生き方」という概念に疑問を持つ人

  • 周囲の期待に応えるために自分の気持ちを押し殺している人

  • 繊細な心理描写が魅力的な小説を読みたい人

  • 複雑な人間関係の機微を丁寧に掬い取った小説を読みたい人


②死んでもなお、僕らの青春は終わらない★3.9

◆『死んだ山田と教室』金子玲介(2024/5/15発売)

自分はなぜ生きているのか、自分はなぜ死なないのか、逡巡の中にいるすべての人へ。

Amazonより

第65回メフィスト賞受賞作『死んだ山田と教室』。クラスの人気者・山田が交通事故で亡くなった直後、教室のスピーカーに憑依するという斬新な設定から物語が始まる。高校生たちの日常会話を軸に、笑いあり涙ありの青春ドラマ展開が魅力!

前半は男子高校生らしいくだらない会話と笑いに溢れているが、後半になるにつれて山田の死の真相や、生きることの意味、友情の在り方など、深いテーマにも触れていく。リアルな会話と独特な設定が噛み合い、物語に没入させる流れが秀逸。これぞメフィスト賞というのを体現した一冊!!

✴︎おすすめの読者層

  • 青春×ミステリー小説やエンタメ性の高い小説が好きな人

  • 高校生の日常や友情を描いた作品を楽しみたい人

  • 独創的な設定の小説を求めている人

  • 会話劇や脚本調の文体を好む人


③あなたは、この見えない列から抜け出せるか?★4.3

◆『列』中村文則(2023/10/5発売)

又吉直樹さんも絶賛!!

⚫︎あらすじ

男はいつの間にか、奇妙な列に並んでいた。先が見えず、最後尾も見えない。そして誰もが、自分がなぜ並んでいるのかわからない。ある時、主人公の男は、この列に並び続けるか、それとも離れるかという選択を迫られる。周囲との駆け引きを通じて、彼は優越感や焦燥感、連帯感など、様々な感情に翻弄されていく。果たして、男はこの奇妙な列から出ることはできるのだろうか。

Amazonより

そもそも私たちは何のために列に並ぶのか?中村文則氏の最新作『列』は、列に並ぶ人々を通じて、現代社会の縮図を描く。カフカや安部工房を思わせる不条理な設定の中で、主人公が列に並び続ける意味を模索する姿は、競争社会を生きる私たち自身の姿を映し出しているかのようである。「後ろに人がいなければ列に価値はない」という表現が示すように、他者との比較が私たちの行動を支配している現実に気づかされる。人間の本質を浮かび上がらせる物語に、哲学的な考察を促されることだろう。

中村文則氏は、雇用が不安定化した不況下で青春期を迎えたという。「社会の『列』に並べば報われた昔と違い、今は並ばざるを得ないのに報われない」という世代間格差を経験した、著者自身の経験が反映された本作は、「どのように生きるか」という問いにも挑戦している。

7月27日TBS「王様のブランチ」ブックコーナーの特集でも紹介されました!

✴︎おすすめの読者層

  • 現代社会の問題や人間の本質について深く考えたい人

  • 心理描写の緻密な文学作品を好む人

  • 社会批評的な要素を含む小説に興味がある人

  • 中村文則氏の他作品を楽しんだことのある人


④誰かが作ってくれた料理の温かさが、生きる力を与えてくれる★4.4

◆『カフネ』阿部暁子(2024/5/22発売)

現代社会では、血縁関係のある家族でさえ一緒に生きていくのが難しい面がある。『カフネ』では、血縁にとらわれない新しい形の絆や、他人の優しさが人を救う可能性が一つのテーマとなっている。

本作は、法務局勤務の薫子と、弟の元恋人せつなという、一見かみ合わない二人の女性の関係性を軸に物語が展開される。読んでいくうちに、自分自身の人間関係や生き方を振り返らずにはいられなくなる。薫子とせつなの複雑な関係性の変化に、自分の経験を重ね合わせ、共感し、時に涙した。

物語に登場する料理の数々は、まるで目の前にあるかのように生き生きと描かれ、思わず食べたくなるほど魅力的だ。そして、「誰かが作ってくれた料理の温かさ」が持つ力に気づかされる。日常のささやかな幸せや、人とのつながりの大切さを改めて感じられるだろう。

この本を読み終えたとき、きっと心が温かくなり、明日への希望が湧いてくるはず。困難に直面していても、一人じゃないと感じられる。そんな勇気と共感を与えてくれる一冊です。

✴︎おすすめの読者層

  • ファンタジーではなく、現実に沿った物語展開を重視する人

  • 血縁関係にとらわれない新しい形の人間関係や家族の在り方に興味がある人

  • 料理や食事を通じた人々のつながりや癒しについて考えたい人

  • 家庭が抱える現代の社会問題に関心がある人


⑤誰かの犠牲なしに、私たちは生き残れない—★4.5

◆『方舟』夕木春央(2022/9/8発売)

【週刊文春ミステリーベスト10】2022年国内部門第1位に輝いた『方舟』。本作は、閉鎖空間で繰り広げられる究極の生存ゲームを描く。地震で孤立した9人の男女が、脱出のために1人の犠牲者を選ばなければならない極限状況に置かれる。そんな中で次々と起こる殺人事件。果たして犯人は誰なのか?生き残るのは誰なのか?

夕木春央が紡ぐ緻密な心理描写と予想を裏切る展開に最後まで目が離せず1日で読了。ミステリーファンはもちろん、人間ドラマや倫理的ジレンマに興味がある方にもおすすめの一冊。現代社会の問題にも切り込む深いテーマ性と、読了後も残る余韻の振れ幅は本作が上半期1番かもしれない。

✴︎おすすめの読者層

  • 古典的なクローズドサークルミステリーを新しい視点で楽しみたい人

  • 緊迫感のある展開を楽しみたいサスペンス好き

  • 極限状態での人間の心理や行動に興味がある人

  • 初めてミステリーものを読む人


⑥「当たり前」を揺さぶる一冊★3.8

◆『ブルーマリッジ』カツセマサヒコ(2024/6/27発売)

「あなたは無自覚に人を傷つけていませんか?」カツセマサヒコの最新作『ブルーマリッジ』は、この問いに真っ向から挑む。

本作では結婚と離婚をテーマに、世代や価値観の異なる二人の男性が登場する。社内ハラスメント疑惑をきっかけに交錯する彼らの物語は、「夫婦関係、家族の在り方、仕事、日々の暮らし、他者との関わり、そして生きる意味」について考えさせられる。あえて異なる世代や立場の人物を描くことで、結婚や離婚について現代の価値観や人間関係の葛藤を浮き彫りにする。

あなたの視点を刷新するこの魅力的な物語をぜひ体験してほしい。

✴︎おすすめの読者層

  • 水の奔流のようにスラスラ読める文章を探している人

  • 結婚や離婚について考えたい人、または現在そのような状況にある人

  • 職場や人間関係の描写にリアリティさを求める人

  • 人を傷つけてしまうことへの無自覚さや価値観の押し付けなど、現代社会の問題について考えたい人


⑦弱さを抱きしめて、強く生きる★4.0

◆『平熱のまま、この世界に熱狂したい(増補新版)』宮崎智之(2024/6/10発売)

平熱のまま、この世界に熱狂したい』というタイトルに惹かれて購入。本作は、宮崎智之氏が自身のアルコール依存症と、その後の断酒生活を通して得た洞察を綴ったエッセイである。宮崎氏は「弱さ」を受け入れ、日常の中に潜む喜びや意味を再発見する方法を読者に寄り添う形で展開してくれる

個人的に良かった点は、著者によるトルストイやフィッシュマンズなどの文学や音楽的要素が著者の日常に溶け込む形で引用されていたところ。日常の風景や感情の機微を新たな視点で捉え直すきっかけをくれた。

✴︎おすすめの読者層

  • 日常生活に新たな意味を見出したい人

  • 自己受容や自己理解に興味がある人

  • アルコール依存症や人生の困難を経験した人、またはそれらに関心がある人

  • 文学や芸術に興味があり、それらを通じて人生を考えたい人

✴︎まとめ

今回は私の好みが詰まった7冊をご紹介しました。皆さんの心に響く本との出会いのきっかけになれば幸いです。気になる作品を見つけたら、ぜひ手に取ってみてください。最後までお読みいただきありがとうございました!

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