文学フリマ東京初出店レポ
2023年5月21日、文学フリマ東京36に出店しました。これが私のイベント初出店だったので、記録として、また今後文学フリマへの出店を検討している方への参考として、出店を決めたところから準備、そして当日までのことを書き残そうと思います。
*きっかけ
文学フリマのことは、五年ほど前、Twitterで物書きアカウントを始めたての頃に知りました。
2018年に初めて一般参加して以降、何度も足を運んでいたのですが、会場にてお会いした方に「藍沢さんも出店なさってはいかがですか?」と言っていただけることが何度かあり、また、Twitter上でも「藍沢さんの本をお迎えしたいです」というお言葉を複数の方からいただいておりました。
私は体調の問題もあって、これまではずっと、自分の本も文学フリマも、いつかできたらいいな、というぼんやりとした夢でした。しかし、近年になって少しずつ、その「いつかやりたいこと」に挑戦し始めました。ネットプリントを利用したコピー本の制作、電子書籍の発行。そして、最終的に、「紙の本を作ろう! 作るなら文学フリマにも出よう!」という決心をしました。
*出店までの流れ
合同サークル結成、準備開始
文学フリマに出店したいと考えている旨を、長年の友人である不束百ちゃんに話したところ、合同出店してくれることになりました。私は病気の関係で不安を抱えやすいのですが、そんな中で彼女の存在は終始心の支えでした。これ以上ない心強い相棒です。
それから、二人で話し合い、「白白明けで待ち合わせ」という合同サークルを結成して、文学フリマに申し込み、そこから二人での出店準備が始まりました。
まず決めたのは、イベントに先立って作ったTwitter上の合同サークルアカウントの運営についてです。私がロゴデザイン、不束ちゃんがヘッダーイラストをそれぞれ担当しました。二つが出揃うと、本当に一緒に出店できるのだと実感が湧いてきました。
並行して、設営についても話し合いました。不束ちゃんは他のイベント出店経験があるので、すでにあるものを教えてもらい、それに買い足す形で必要なものを揃えていきました。最終的に設営に使ったものは、次の通りになります。
・イベント出店用の敷き布
・ブックスタンド
・組み立て式ダンボール棚
・ポスタースタンド
・オリジナルポスター
頒布物と発注について
そして、一番大切な頒布物について。お互いの個人制作物の他、ずっと憧れだった合同誌を発行することに決めました。話し合った結果、サークル名「白白明けで待ち合わせ」にちなみ、「真夜中から夜明けまで」をテーマに詩集を制作することになりました。タイトルは悩みましたが、率直に『夜を辿る』というタイトルを採用しました。
3月から話し合えていたので、あまり焦りはありませんでした。4月には入稿データもほとんど出揃い、5月に入ったら注文しよう、と軽く考えていたのですが……
アクセス集中を考えると5/5のコミティア後が良いかと思って、終わるのを待って注文画面に行くと、検討していた印刷所からの宅配搬入がギリギリ間に合うかどうかになってしまうことが発覚。(ちなみに、学割があったため、株式会社グラフィックさんを検討していました)
仕方がないので、合同誌は家から持っていくことになり、私の個人誌は以前利用したことのあるちょこっと印刷工房さんにお願いすることにしました。10営業日はおろか、8、6の枠も既に無く、4営業日での注文で宅配搬入をお願いすることとなりました。原稿は準備できていたのに割高になってしまい、注文は原稿ができ次第、早めに済ませること、宅配搬入期間の確認はきちんとしておくべきだと学びました。(他社さんでしたらもっと遅くても大丈夫だったりするかもしれません)
そして、今後の通販やイベント参加を見据えて、私の個人誌は40冊ずつ刷ったのですが、それを全て宅配搬入してしまったので、新刊の出来を現場で確認しなければならなくなり、日が近づくにつれてそれが怖くなりました。不安を減らすために、自宅での確認用の本も注文しておくべきだったかもしれません。
宣伝
初出店かつ、本の数もそれなりに刷っているので、5月に入ったあたりから宣伝に力を入れました。Twitterで情報を小出しにしながら、 #文学フリマ東京 のタグを付けて頒布物の紹介をして、投稿数を増やしてみたり。実際、Twitterで頒布物の紹介を見て本をご購入くださった方が多かったように思います。
主は合同アカウントのあるTwitterでの宣伝ですが、他のプラットフォームも活用しました。利用したのは、note、くるっぷ、Instagramです。特に、noteについては、タグから来てくださるフォロワー外の方が多く、良い宣伝になったと思います(実際にご購入いただけたかどうかは不明ですが)。
*文学フリマ当日
当日、不束百ちゃんと9:30過ぎに合流し、お昼ご飯を調達してから会場に向かいました。
早めに出店者列に並ぶことができたので、会場設営終了後(10:30過ぎくらい?)、出店者受付をすぐにすることができました。二人がかりだったのでスムーズに設営を終えて、二人してそわそわしながら開場を待ちました。
開場してしばらくは、少しずつの入場のためか、なかなか人通りが少なかったです。今思えば、開場してすぐに近くにいらっしゃる他の出店者さんのところを周っても良かったかもしれません。1時間ほど経つと、ブース付近を歩く方も多くなっていきました。
今回の文学フリマ東京は、出店者併せて一万一千人の来場者数だったそうです。5月下旬ということもあり、会場内はかなりの熱気でした。麦茶と塩分補給用のドリンクを持って行ったのですが、これはかなり大事だったな、と思います。それから、途中から糖分がすごく欲しくなったりしたので、お菓子も持って行って正解でした。
Twitterのフォロワーさんが遊びに来てくださったり、ときどき不束百ちゃんの絵を目に留めてくださった方がいらして、合同誌や個人詩集「夜想」、不束ちゃんのポストカードをご購入いただきました。表紙から全て自作の個人掌編集「ゆめのかけらたち」も、合同誌や「夜想」に比べると少ないですが、何部かご購入いただきました。
感じたのは、やはり絵の力はすごいなぁというのと、Twitterの私は「詩を書く人」という印象が強いのだろうな、ということでした。自認としては「小説の傍ら詩を書いている」なので、今後の発信で小説の内容にも興味を持っていただけるように努力したいと思います。(ブースが掌編・短編部門だったので、お手軽に読めるものの方が好まれたのかもしれません。他部門で参加していたらまた違ったのかも?と思います)
印刷した40部全てを搬入してしまいましたが、売れたのはどれも一桁部数程度だったので、残ったものは全て宅配搬出しました。着払い料金、どうなることやら……。東京での文学フリマへの持ち込み冊数は、一種につき多くても15〜20部くらいで良さそう、という感触です。
今後イベント出店するにしても、40部も刷る必要はないかもな、と思いました。多くて30、なんなら20でもイベント2、3回分になりそうです。
一方、名刺は不束ちゃんと二人でフリーペーパーを配る体で積極的にお渡ししていったのもあり、かなりの量を捌けました。50部はなくなったかも、という印象です。(全力で配った結果なので、置いておく程度ならそこまで無くならないかもしれません。効果があるかは分かりませんが、私たちを知ってもらう第一歩にはなったかな、と思います)
17時まで滞在しましたが、思ったより時間が流れるのが早かったです。二人でいたから、というのもあるかもしれません。
あまり会場内を周ることはできませんでしたが、Twitterの相互さんが来てくださったり、たまたま通りがかった方がご購入くださったり、興味を持ってくださった方が名刺を自ら持ち帰ってくださったり、どれもとても嬉しかったなぁ、と感慨深く思います。イベントでなければ体験できないことばかりでした。お隣のブースの方々もとても優しく親切な方々で、人に恵まれたなぁ、という気持ちです。
そしてなんと言っても相棒の不束百ちゃん、本当に準備時から当日までずっと支えでした。合同出店できて良かったし、また二人でイベントに出たいです。
そんなこんなで、とても幸福な気持ちで帰宅しました。購入品はこちらになります。たくさん回ることはできませんでしたが、各ブースで爆買いしました。ゆっくり拝読させていただきます。
*今後への反省、出店なさる方へのアドバイス
まず、当日以前の宣伝も積極的に行うべきです。お品書き以外にも、本の内容紹介などこまめに発信していくと良いかと思います。コンセプトがある場合、それを明確にすることも必要かと思います。
今回、頒布物紹介のツイートからご来店くださった方もいらっしゃいました。Twitterをプラットフォームとして活動している場合は、普段から作品を発信していくのも大切だと思いました。再掲でも良いので、月に何本かは作品を見ていただく機会を設けていきたいです。
頒布物については、やはりビジュアルで印象づけられるものの方が有利に見えました。文字を大きく配置してみたり、フリー素材の組み合わせてみるなどでもいいので、装丁から興味を持ってもらえるように工夫してみると良いかと。今どきはネットでたくさん無料で使えるテンプレートなどもありますので、活用してみると良いと思います。
設営に関しては、立体的な設営の方がやはり目立つな、という印象でした。
今回組み立て式ダンボール棚を使いましたが、それを見て立ち止まってくださった方が多かったように思います。ブックスタンドに置いているポストカードのサンプルもよく目に留めていただきました。
それから、今回の設営では場所が足りなかったので見送りましたが、作風やコンセプトを記したボードなどがあればより良かったかもしれないと思います。
個人的には、台などを用いて段差を作り、複数の本を重ならないよう配置していた設営がお上手だなと思いました。
見た目以外では、売りものをすぐ手に取れる場所に置いておくことも大切です。その点でポケット付きの敷布は重宝しました。立体的な設営をした裏に積んでおくのも良いかもしれません。
それから、持ち物について。売りものや設営用品はもちろんですが、サンプル本、釣り銭(特に100円玉、500円玉)、お札を入れる封筒、値札、名刺、筆記用具なども大事でした。宅配搬入の場合はカッターナイフ、宅配搬出の場合はガムテープまたは紙テープが必要です。
5月や夏場の出店の場合、熱中症対策は必須です。スポーツドリンクなど塩分補給系が良かったです。
今回は名刺をフリーペーパーがわりに配りましたが、受け取ってくださった方がご購入くださったりもしたので、そういった無料で配るものもあると良いかと思います。お隣のスペースでは、フリーペーパーをたくさん置かれていましたが、立ち止まっている方も多かったです。
そして、何冊捌けるかより、目に留めてくださった一人一人への感謝の気持ちを持つことが大切だな、と思いました。
正直に言って、私の本は数で言えば、ほとんど減っていないも同然です(もちろん元の数が多すぎたのはあります)。しかし、藍沢紗夜の作品を好いてくださる方とイベントで直接お会いして、本をご購入いただけること、その場で目に留めてくださってご購入いただけること、ひとつひとつが本当にありがたいことだったと思います。
もちろん、売れるに越したことはありませんが、部数にこだわりすぎず、純粋にその場を楽しむことがイベント出店のひとつの目的であるべきだと思いました。
*「白白明けで待ち合わせ」今後の活動について
今のところ、今後のイベント出店については決まっておりません。でも、二人とも出店への意欲はあるので、いずれまた、イベントでお会いできるかと思います。その時はぜひ、遊びにいらしてください。
*通販のお知らせ
架空ストアにて、個人頒布物『ゆめのかけらたち』(掌編小説集)、『夜想』(散文詩集)の通販をしております。ご興味のある方はぜひ、お求めやすい方でご購入いただけたら幸いです。
『ゆめのかけらたち』文庫本/全70p/¥400
生きていくための掌編小説たちです。1万字以下のお手軽に読める作品を集めました。「思わず涙した」「辛いときにまた読み返したい」などのご感想をいただいております。
『夜想』A5/全20p/¥500
孤独な夜のための幻想散文詩集です。Twitter再録作品と、書き下ろし作品を収録しております。「文章が美しい」「夜に少しずつ読みたい作品」などのご感想をいただきました。
2冊とも、誰かの灯火になれるようにと祈りを込めて作った本です。夜モチーフがお好きな方や、優しい作品を読みたい方におすすめです。
公開中の小説の方もよろしくお願いいたします。