「役に立つかどうか」よりも惹き寄せられるもの。『哲学的な何か、あと数学とか』を読んで
SF冒険活劇のような科学に対して、数学はハードボイルドなヤンキースポ根ドラマのよう。
数学という役に立たないもの時間を費やす、なんとも救いがたく愛おしい情熱といったら!
中学、高校と私は数学が好きでした。
答えが必ず出るから。答えがあるとわかっていたから。
どんなに悩んでも、答えは必ず出るから難しい問題ほどうれしかったのを覚えている。
だけど、それは先人たちの答えがあるかどうかを探す壮絶な戦いがあった上に成り立っていたということか。
しかも、その答えのあるかないかも、終わりがあるかないかもわからない戦いは、「地球に隕石がぶつかる!」とかそんな危機に直面して否応がなしに挑む戦いではなく、人間自らが作り出しているというから、驚愕もいいところだ。
たったひとつの突破口を見つけたいという野望。
答えがないという答えを探すという絶望。あるいは希望。
解決の見込みのないものが存在するという真実。
引き継がれる予想と定理と意志。
努力は報われないという現実。
だけど、どうしても魔力に引き寄せられてしまい、そんな役に立ちそうもない問題や謎に、心奪われ人生を賭けることができるという事実。
そして、「役に立つかどうか」を棚上げしてでも、「美しい」と思えるものを追究する人間の情熱がもたらした神秘。
そう、それもやっぱり真理なのだ。
つい、目の前にあるものばかりに目を向けてしまうとき、
つい、なんでもかんでも答えを探してしまうとき、
つい、すべてを理解したかのようなわけしり顔になってしまうとき、
つい、何者でもない自分に焦ってしまうとき、
つい、退屈だ…とぼやいてしまうとき、
つい、狭い世界にこもってしまうとき、
つい、広い世界ばかりに目が行ってしまうとき。
ぜひ、そんなときにのぞいてみてもらいたい世界がここにはありました。
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