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#読み物
【読み物】沈黙義塾-秘すれば花-
都内某所、区民ホールの3階、とあるセミナールームではこの日大きな期待感と少しの緊張感が渦を巻いていた。午前10時20分、既にここには10名弱の男女が集まっていた。中央に置かれた石油ストーブを囲むように並べられたテーブルには、なぜか『週刊新潮』が一人一部ずつ置かれている。無言で座る彼らはそれを手に取ってみたり、スマートフォンを操作したりしながら、それぞれセミナー開始時刻を待っていた。
席に座る。隣
【七夕の読み物】新訳 ブラザー軒
田舎から出てきて10年、東京で忙しく働いている。「忙」という字は、「心を亡くす」と書くと、いつかどこかで聞いた記憶がある。適当なネットニュースだったかもしれないし、毎週金曜日に飲みに行く馴染みの店だったかもしれない。いつどこで聞きかじったかは忘れたが心に残っているということは、すなわち自分にとって真理であるということだろう。事実、故郷を想う暇もないし、自分が本当にやりたいことも忘れかけている。まさ
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