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必要以上に頑張り過ぎてしまう、そんな日は。
今日は、朝からソワソワ、ザワザワしている。
久しぶりに一人で外出をし、その出先で人と会う用事があるせいだ。
しかも、ほぼ初対面の人ばかりというシチュエーションが待ち構えている。
とにかく、目的地に到着したら、手短に挨拶を済ませて、手土産を置いて、すぐに失礼しよう。
マルも、久しぶりの留守番だし、早く帰ってあげたい。
もう、行く前から、とにかく帰りたいのだ。
食事を摂ろうにも落ち着かないので、早めに出発することにした。
早く行って、早く帰ってこよう。
それがいい。
久々に乗る電車内は、時間帯的に空いていて、ひとまず座ることができた。
それから片道20分、降車駅から目的地までの徒歩ルートを確認し、初対面の方々と挨拶を交わす場面を想像する。
大丈夫。すぐ終わる。
いざ駅の出口を抜け、慣れない街並みを、確認済みのルート通りに進んでいく。
程なく、目的地に到着した。
扉は開放してあり、中の様子がよく見える。思ったより、人の数が多い。
一瞬足がすくむが、ここまで来たら、一刻も早く用事を済ませたい。
こんにちは
はじめまして
いつもお世話になります
いつもありがとうございます
お忙しいところお邪魔してすみません
ありがとうございます
よろしくお願いします
そんな定型文を繰り返しながら、そして、明らかに挙動不審になりながら、早々に本日の任務を終える。
忘れずに、手土産も置いてきた。
よし、よし、よし。
帰ろう、帰ろう、帰ろう。
つい数分前に渡ったばかりの横断歩道を、駅の方角へ向かって再び通過する。
左腕に違和感を感じたのは、そのタイミングだった。
痒い。
袖を捲ると、二の腕に蕁麻疹が広がっている。その赤さに気づいてしまうと、余計に痒い。
ここまでハッキリ身体に出ると、驚きや不安よりも、むしろ安堵感が広がる。
頑張ったよ
もういいよ
無理しなさんな
帰宅すると、マルが尻尾を振って喜んでくれた。身体中の力が抜ける。
ただいま
おかえり
そういや、蕁麻疹の薬、買って帰ればよかったな。
まあ、いいや。
すぐにシャワーを浴びて、洗濯機を回そう。
夕飯は、カレーにしよう。