学習理論備忘録(46) 小林弘幸先生の本を初めて読みました!
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社会心理学は人間の生態を数値化して論じる学問だが、設定する状況がかなり特定される上に測定するものをアンケートに頼ることが多く、本当に人一般に当てはまるものか疑ったほうがよいことがままある。にもかかわらず世の中では社会心理学系の話題が取り上げられすぎていて、気になる。行動経済学も、行動分析的な研究もあるいっぽう、社会心理学的な実験も多い。
それでも、実験による裏付けのある学問なだけまだよい。昔は「心」の中身を仮説から語る論が多かった。また、心の問題を心で解決しようとする方法論も多いが、言われるほど簡単に解決はしない。そういうのが役に立たないとは言わないが、素朴な例として、要するに「気の持ちようで気持ちを変えればよい」と述べているだけのものがある。これでは小泉文法だ。
そもそもそ「気の持ちよう」がどう変えられるのかわからなくてみな困っている。
さて今回の学習理論備忘録は『リセットの習慣』(小林弘幸、日経ビジネス文庫)の感想文である。学習理論の話ではないが、「自律神経」がキーワードとしてたびたび出てきて、自律神経はパブロフ型条件づけとは関係あるし…ということで、毎度強引にこの備忘録シリーズで扱うことにした。
小林医師のこと初めて知った。驚いた。健康に過ごすための知恵の宝庫である。これなら困っている人に役に立つと思える。
著者紹介を見ると、先生は元は小児外科医だったのか。へえ。しかもスポーツドクターとある。そりゃ実践的だ。じゃないと使えない。小林先生は他にも健康的な習慣について多くの本を書いている。
なによりテーマをピンポイントで自律神経に絞っていて、シンプルだ。
人の気分というものは揺れ動いている。そう言われればだれもが「たしかに」と思うであろう。ではそれをどうやったらコントロールできるか? もっとも確実な影響力を与えるのは、心ではない。体を動かすことである。行動することである。さらにはそれを習慣にすると、気持ちの安定がえられるのである。
だからこの本では、例えば、まず「立て」と言う。そうすれば血流が増える。「気の持ちよう」という言葉など、かすむほどに役立つ教えである。小学生でも正しいと理解できる。
たとえば嫌な人には、徹底的に関わらないという方法と、悪い人と決めつけずに積極的に関わる方法の両方のアプローチを示してくれている。もっと大事なのは、どっちにしようと迷わずに、どちらかにしっかり軸をおくことに決めて実践することだそうだ。迷うのが自律神経を乱すことにつながるからだ。
朝食の効用などは、私が知らなかったことである。起きてから90分以内に、かなりしっかりとした食事をしたほうがよいらしい。糖ではない炭水化物を軽く取っておけばよいのであろう、とか思っていたが、そうではなかった(まあこのへんのことはまたひっくり返ることもあるかもしれないが)。
他にも、介護に疲弊する人には、「感謝されることを期待しない」とか、果てしなく献身的になりがちだが「後悔しない、ということを基準にしてそこまで頑張ればよい」とかなり具体的な案が挙げられる。
「マインドセット」なる言葉が変にはやっているので、その手のありがちな啓蒙書だろうと思っていたのだが…いい。この本、すごくいい。
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