世界一小さな芸術祭2023レポート②〜佐藤紘子×橘佳世「∞」〜
佐藤紘子×橘佳世「∞」公開クリエーションにて
寺越に公開クリエーションの場所を聞いて経堂駅を降りた時にふと思った。そういえば私から能動的に動くのは始めてかもしれない。最近の私はどうかしてるのかもな。
経堂駅を降りたのはもう随分前だろう。こんな駅だったのかとゆっくり辺りを見ていると駅の横のほぼ隣あわせの商業ビルに立派な大階段があり、そこに彼らはいた。二人の女性は参加者の佐藤紘子さんと橘佳世さんだろう。そしてフードを被った寺越、怪し過ぎるやつだ。
私は黙って見ていた。
佐藤紘子さんと橘佳世さんが階段を登ったり降りたりしたあとに寺越と三人で話している。そしてまた階段を登ったりしている。
何をやっているのだろうか?
寺越が下に降りてきたので話しを聞く。
「この階段みて二人と話してたら、この階段をつかって彼女達の8年間が表せられたら面白いなぁと思ってやってみているところっす。あ、8年前というのは二人の出会いでもあり、言い出しっぺの佐藤さんの心残りの時でもあるんすよ。」
上に行くほど現在に近づいていくということだろうか。うん?タイトルの「∞」は無限大だと思っていたがこれはもしかしたら8なのか?相変わらずよくわからないが、そこからまた黙ってみていた。
ただ寺越の話しを聞いた上で見ているとさっきまでは淡々と階段を登っているようにしかみえなかったが全くみえ方が変わっている事に気づく。
佐藤紘子さんと橘佳世さんの身体や速度や距離が彼女達のその時々の抱えていた事、時間感覚、関係性などを想像してしまっている自分がいた。意味がわからないものに少しの説明をつけただけでこういう風に景色が変わるのか。
登っては話してまた登ってとやっていくうちに少しずつではあるが鮮やかになっていく佐藤紘子さんと橘佳世さんの8年間。
そういえば私は寺越の作ったものはどうやって作ったか知らない。そもそも演劇やパフォーマンスの創作過程というのを私はみたことがない。
そういう意味でも公開クリエーションは興味深かった。
三人が降りてきて私に感想を聞いてきた。
私の感想に興味津々な佐藤紘子さんと強い視線でしっかり受けとめようとする橘佳世さんを直視して私は不覚にもたじろいでしまった。
「まぁ中谷さんはレポート書いてくれますから、それ楽しみにしましょうよ」
寺越の言葉が助けになるとは予想外だった。だがあいつはこの状況を楽しんでるに違いない、そういうやつだ、あいつは。
まだ公開クリエーションは続く。
8年間がより鮮やかになっていく様をまた見に行こう。その時は堂々といたいものだ。
文 中谷計
チラシデザイン 吉田みずほ
※寺越のInstagramには公開クリエーションの様子が毎回公開されている
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