「マスクオンマスク」エキシビジョンマッチ
2021年12月に行われた世界一小さな芸術祭2021(出会った人と作っていくぜ東京芸術祭)で 「マスクオンマスク」エキシビジョンマッチが実は人知れず開かれていたんです。
近くの幼稚園の園児達がたくさん遊んでいる公園にゲリラ的に乗り込んで「マスクオンマスク」をやりました。
その時の模様を戯画リンピックライターの中谷計さんがまたもや書いてくれています。
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自分の感情がこんなにも浮き沈みすることが今まであっただろうか
「マスクオンマスク」エキシビジョンマッチ当日、私はあの東京2020戯画リンピック決勝の早い再戦に胸を踊らせていた。
しかし会場に着くと寺越隆喜と山下智代の姿はなく沢山の子供達と保育士らしき人が数名、場所を間違えたのではと困惑していた。
すると近くから笛の音が、そちらを見るとキンパツアフロでオレンジのライダースに身を包んだ寺越とモコモコ過ぎる帽子に真っ赤なアロハと季節制のない姿の山下が颯爽と表れて、子供達が遊んでいるところに何も言わず突き進んでいく。
まさかこの状態でこの場所でやるのか、そもそもその格好は。私の困惑は高まっていく。
二人がマスクを様々なところに貼っていく。寺越のところに子供が大量に集まる、無理もない、珍しい動物に見えてるのだろう。
貼り終わり「マスクオンマスク」の説明を始める二人。子供達の反応を見る限り伝わっていないのだろう、その証拠に勝手に遊び始めている。
私は憤りを覚えてきた。
東京2020戯画リンピックだからこそ、この時代の状況だからこそ生まれたといってもいい「マスクオンマスク」なのだ。戯画リンピアンである二人が価値を落としてどうする。
なぜこの状態であなた達の技を見せるんだ、誇りはどうした。
気づいたら手を強く握りしめていた。
二人の説明が終わり開戦の篠笛が鳴る。
どうやらこのエキシビションを彩る音はオカリナゆうこ氏ではなく篠笛みずほ氏が担うらしい。
篠笛の音が私の心を少し落ち着かせる。
しかし、すぐに恐れていた事が起こる。
子供達がマスクを勝手にはがして寺越と山下に渡しにいく。私の怒りは子供達にも飛び火、ましてやそれを止めない保育士達にも怒号を浴びせたくなった。
どういう気持ちで戦っているのだと二人を見ると、なぜだ、楽しんでいる、喜んでいる。
子供達に「マスクを持って来て」とお願いする二人。相手のマスクを持ってる子供を探し、それが追いかけっこになり全身で子供達と遊んでいた。
必死に子供を追って本気で嫌がられ始める寺越と柔らかい雰囲気で優しく子供を包み込み、時には子供を巧みに操る山下、そして何より楽しそうに笑顔をみせる子供達。
その光景を見て私はいつしか笑っていた。
怒り、困惑など消え去り単純に楽しんでいる自分がいた。
閉会の儀式も勿論この前のようにはいかなかったが最後の寺越の意味不明なエイエイオーのかけ声が会場を一つにした。
出場と同じように颯爽と退場する二人。
しばらくの間、私は動けなかった。
先ほどの出来事などなかったかのように違う遊びに興じてる子供達の声を聞きながら私は気づいた。
忘れて欲しいと同時に覚えていてほしいのだと、この状況、この社会を。
だから一緒に体験する方法を彼らは選んだのだろう。これからの未来を担っていく子供達に訴えかけるために、体験を刻みつけるかのように。
寺越隆喜と山下智代の二人の戯画リンピアンに生きてく上で大切な¨戯れ¨を教えてもらった気がした。
子供達の笑い声を背に私はその場を颯爽と後にした。
文 中谷計
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