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体験型アトラクション「Feelinling」レポート

まずい、寝坊した。
急いで身支度をしてタクシーを拾い、東京駅に向かう。

昨晩は飲みを断れず、気が乗らないまま酒をつきあわされた。接待飲みというものだ。これはフリーの辛いところ。タバコ臭いスナック全体に響き渡るカラオケの大音量を聞きながら酒を流しこみ、相槌をうつ。一体家に着いのは何時だろうか?

ノロノロ走っているタクシーに急いでいる旨を伝えると口調が荒くなっている事に気づく。ゴン(ゴン田中)に連絡をして遅れると伝えるとLINEのスタンプがなかやまきんに君の笑顔で腕を曲げているものだった。これにもなぜかイライラしてしまった。続けて硝子(高永硝子)にも同様の事を連絡すると「珍しい!どうしたの?」と返信がきたが、詳しくは後で話すとだけ伝えて、少し自分を落ち着かせる。

頭が冷静になってくると、こんなにも慌ただしくしてまで、Bubuuun(寺越と樋口さんのユニット)の作っているものを見に岩手県二戸市までわざわざ行く必要があるのだろうか?という考えが頭をよぎり出した。

私はなぜ何度も寺越の作るものを見にいくんだろう?別に好きでもない。特別に面白いわけでもない。なんならわからないものばかり。

東京駅が見えてきて、時計をみるとどうやら間に合ってしまう。ゴンと硝子の顔をみて、これから岩手県二戸市にBubuuunを体験しにいくことが現実味を増してくると不思議な事になぜか心が少しだけ軽くなった。

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ギフト北岡の看板が見えてきた。ここの空き倉庫が今回の舞台と聞いている。ギフト北岡の駐車場の入口に体験型アトラクション「Feelinling」のチラシが貼ってある置物を発見。その先をみるとポツンと存在する怪しい外観の建物を発見した。怪しすぎる。
「ケイさん!あれじゃないっすか!」
興奮したゴンがギフト北岡の駐車場を走り抜け、その怪しい小屋へ。
「ご自由にお入り下さいって書いてありますよ〜」
ゴンは中を覗きこんで入っていった。
「こういうところお客さんに不親切よね。受付用意すればいいのに」
横で硝子が不満を口にする。
私と硝子もゴンの後に続き、怪しい小屋に入っていく。中に入ると不思議な音が響き渡り、窓という窓は光が入ってこないように塞がれていた。小さなライトがついており矢印が奥の囲まれた空間に誘導している。
「ケイさん、奥真っ暗っすよ!おれダメなんすよ〜」
「ゴンくん大丈夫よ。ずっといると目がなれるから」
硝子がゴンを諌めて矢印に従い、奥の空間に入っていく。

本当に真っ暗だ。

入る時の隙間からわずかに中が見えた。どうやら床や壁に新聞が張り巡らされている。暗すぎてあまり身動きがとれない。背中にはゴンがピッタリと隠れて身を寄せている。硝子はというとあたりをキョロキョロしている。
目が少しずつ真っ暗な空間に慣れてくると、奥になにかいることに気づく。2体がゆっくり動いている。
「なんかいますよ、ケイさん!」
ゴンうるさい。恐らく寺越と樋口さんだろう。
ゆっくりと動く彼らの姿ははっきりとは見えない。急に彼らから小さな明かりが放たれた。その明かりは彼らの動きに合わせてゆっくり移動する。その小さな明かりの数が徐々に増えてくる。光線の数々がゆっくり舐め回すかのように空間を顕にしていく。
放たれる光線によって寺越と樋口さんはまるでゆっくり動くミラーボールのようだった。
暫く続いただろうか。徐々に光線の数が減っていき、また一つの光線に戻った。黒い物体の樋口さんと寺越が近づいてくる。そして私たちに身体に巻きつけてあった懐中電灯を手渡して外に出ていった。

一体なんだったんだろうか。

呆然としている私に体して硝子は早速懐中電灯であたりをよく観察しだした。ゴンも恐る恐るではあるがあたりを観察。
「こっちきてゴンくん」
「うわ!びっくりした〜なんすかこれ」
「鏡じゃないかな(笑」
そんな二人を見ていて私もようやく懐中電灯で観察しだした。しかしよくこんなに空間全てを新聞で覆ったものだ。懐中電灯にも細工がしてあり、はっきりした明かりというよりは薄っすらとした光しか出てこない。そんな薄っすらとした光で新聞に囲まれた空間を見ているとぐらついた足元もあって宇宙空間のような錯覚を覚えてくる。
暫く空間を見渡して硝子が外に出ていく。続けてゴンも出ていった。私は一人でこの宇宙空間にとりのこされた。ゆっくり懐中電灯を動かしていく。不思議だ。ここと繋がっていくように感じる。気味の悪い音だと思っていたが今は妙にしっくりくる。
「ケイさん〜まだいるんですか〜!」
ゴンはうるさい。外からの声によって私はこことの繋がりが切れたような気がして外へ出る。
外には寺越と樋口さんが待っていた。
「まさかきてくれるなんて嬉しいっす!」
「毎回毎回本当にわざわざありがとうございます」
全身黒い二人は満足そうな顔をして頭を下げていた。「寺越、今回の意図はなんだ?」「私も聞きたい!」 
寺越は長々と喋り始めた。
「二戸市の自殺率の高さから″死″というものを考え始めていろんな本を読んでてゼロポイントフィールド仮説というものがなんかしっくりきて、そのゼロポイントフィールド仮説の空間を作りたいと思ったんすよ。そのゼロポイント…」
※詳しい寺越の意図はコチラ


長々と語り終えた寺越は疲れているように見えたので、私たちは彼らと早々に別れた。


寺越のSNSによく出てくる縁起屋瓢という居酒屋へ。

「私は懐中電灯を渡された時デジタル空間に放り出されたと思ったわ。情報ばかりの空間の中で私が選択して情報をみることができる。これはSNSと一緒でしょ。」
硝子はそう感じたのか。
「あの鏡っすよ!今思えば自分を見返せ!みたいに感じて怖くなっちゃった…っていうかあの空間異様〜」
ゴンはそう感じていたのか。

私の感想を二人に伝え、三者三様の感想に「Feelinling」の広がりを感じた。体験型アトラクションと銘打っているだけあって私たちはそれぞれの体験をしたのだ。 

外に出てタバコに火をつける。ゆっくり煙を吸っていると硝子が外に出てきた。
「一本頂戴」
タバコとライターを渡して二人でゆっくり煙を吸う。
「意味わからないよね、私たち。」
言ってる意味がわからなかった。
「だってわざわざよくわからないもの岩手県まで見に来てるんだよ」
「確かにな」

無性におかしかった。自分の行動にもBubuuunのわけわからなさにも。

中からゴンが縁起屋瓢のお姉さんと盛り上がってる声が聞こえる。

少しだけわかった。
私は日常にうんざりしているのだ。未知な世界に連れてって欲しいのかもしれない。硝子はどうなんだ?

「私はどうなんだろうね」

勿体ぶりやがって。

さてとうんざりする日常に戻ろうか。



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