気持ちや感情に形を与えてあげる マインドフルネスとフォーカシング
今回の一言
いろいろな事が浮かんでくるよね。
一つ一つ、先ずはそこにいて良いんだよ。
はじめに
今回から認知行動療法の具体的な方法について、自分が実践した、調べた範囲での情報を共有したいと思います。
自分の記憶を頼りに記載していくため、あやふやだったり、あるいは不正確な点もあろうかと思いますので、適宜参考の書籍は提示したいと思います。
認知行動療法の具体的な方法の前に、是非以前の記事を読んでいただくと、理解が深まるかと思いますので、よろしくお願いします。
気持ち・感情に形を与えてあげる
認知行動療法というと、とかく認知再構成を連想しがちではあるのですが、実はいきなり認知再構成に取り組むと、結構つまづきやすいと思っています。
何せうつ病で辛い時、私達は直面する事実と、なんとも言えないもやもやとの渦に巻き込まれているのですから、いきなり自動思考やら感情やらを記載することはハードルが高すぎると思っています。
そのため、今回の記事では、そうしたもやもや(身体の反応、感情、気持ち)の扱い方を得意とする認知行動療法、つまりはマインドフルネスとフォーカシングの技法をお伝えしたいと思います。
マインドフルネスのはじめの一歩
マインドフルネスは、まだきちんと日本語訳はされていませんが、“今ここにあり、気付きに満ちた状態”とされることが多いように思います。初めて読まれる方は、???ですよね。
では、簡単なエクササイズです。今から1分間何も考えないでいてください。何か思いついたら負けです。
やってみて、いかがでしたか?多分不可能なはずです。むしろ、できた人はかなり悟りに近い状態の方でしょう。心から尊敬します。
人間の脳は、寝ているときにも働くほど働きものです。つまり情報処理をし続けています。何も考えないでいても、必ず何らかの考えが浮かんできます。
それでは、次のエクササイズです。これから、バナナを食べているゴリラを1分間ずっと想像し続けてください。では、どうぞ。
さて、こちらも難しいですよね。
2つのエクササイズから言えることは、人の頭の中は常時何かの情報を処理しているのですが、1つのことだけをし続けるのは非常に難しいということです。
頭とか脳とかいうと、とても即物的なので、こころ、と読み替えましょう。
“こころはさまよい歩くものです”
マインドフルネスは、こうして忙しくさまよい歩いているこころを、今、この瞬間に目を向けるようにし、自分自身の身体に起こっていることに気づきを向ける、といった方法です。かなり流行しているので、ご存じの方も、すでに実践している方もいるかもしれませんね。
さて、では、どうやっていくのか、ですが、初めてこの方法を世に生み出したジョン・カバット・ジンの8週間プログラムでは、必ずレーズンエクササイズから始まります。しかし、レーズン、なかなかすぐには買えないんです。入院しているときは尚困りました。病院の売店では確実にレーズンは買えないからです。そこで取り入れたのはチョコレートエクササイズです。
チョコレートエクササイズ
チョコレートを一粒取り出します
眼の前のチョコレートをまじまじと、いろいろな角度から観察します。
先ずは目で見て形を観察
そして匂いを嗅いでみたり、触った触感を繊細に感じ取ります。
十分に観察を終えたら、口の中にいれてみましょう。
すぐになめ始めないでくださいね。
舌の上に乗っているチョコレートを感じ取ります。
どれくらいの重さでしょうか?すでに味は感じられますか?口の中に入れたときに香りは広がりましたか?舌においている時に、唾液がでてきますか?さて、どこから唾液は出てくるでしょうか?
続いてゆっくりなめ始めても、かみ始めても良いです。
その時どのような感覚が口の中にありますか?この時も味や香り、触感等感じ取れるものを正確に感じ取りましょう。
さて、このエクササイズの間にも、こころはさまよいましたか?例えば、こんなことになんの意味があるのだろう?とか。その他の日常的なことかもしれませんね。こころはさまよっても良いのですよ。先程も述べた通り、それが当たり前のことなのです。先ずは、さまよったことに気が付くことから始めましょう。できるなら、気がついたあとにまた、チョコレートの感覚に意識を向けましょう。
レーズンエクササイズ・チョコレートエクササイズの壁
さて、いかがでしたでしょうか?案外むずかしいと思います。特に、こころがさまよった時です。
よく教科書に書いてある文言で上記は記載しましたが、太字のところ、ここが難しいんです。こころがさまよい始めたことには気がつけるかもしれません。気がつけないこともあると思います。むしろ気がつくと、チョコレートが無くなっているということもあるでしょう。
今回は、ここが最重要点です。この太字ができるようになれば、あとは教科書やワークブックを読みながら、マインドフルネスは自身で習得していけるようになると確信しています。
太字を習得するために、下記のステップが必要です。
①こころのさまよいに気がつくこと
②考え、身体の感覚に名前をつけてあげる
③その考えや感覚を名前で呼んであげる
④その名前を呼び、そこにいて良いんだよ、と言ってあげる
⑤そっと意識を他に向ける
こころのさまよいに気がつくには?
“ところで、今何してたっけ?”
“これって、今考える必要あるかな?”
“やっぱり、こう考えると辛いな”
等、こころと、自分(一般的な意味での理性と言っても良いかもしれない。)あるいは意識との間に少しスペースを作ってあげます。そうすると、考えや身体の感覚を、観察できるようになります。
名前をつけてあげる
ここからは、ストレートにそうした考えや身体の感覚に名前をつけてあげましょう。何でも良いです。しっくりくるものをあてはめましょう。それは、一般的な感情を表す単語でも良いと思います。悲しい、とか怒り、とか。
ただ、往々にして、一般的な感情を表す用語では、十分に説明し尽くせない状態ってあると思います。語学力が達者な人は、とてもうらやましいです。いろいろな表現があり、その中から見つかることが多いですから。次の手法に出会うまでは、私も感情に関する用語を増やす辞書を買ったりしたものでした。
辞典は買っても、なかなかその言葉って出てこないんです。そんな時出会ったのが、フォーカシングという技法です。これは、通常、カウンセラーと行うものですが、下記の質問をコピペして、いつでも使えるようにしておくと、自分ひとりでもできます。できれば、紙に印刷して、書くようにすると良いでしょう。
私なりのフォーカシング
・今、どんな感覚が身体にありますか?
・それは、身体のどの部分に感じ取れますか?
しばらくその感覚を観察してください
・それは、どんな色をしていますか?
・それは、どんな形をしていますか?
・それは、どんな肌触りのものですか?
・それは、どんな重さのものですか?
そうした言葉で表したものに、自分なりに名前を与えられそうですか?
例えば、ちょっと重たい灰色のおばけ、とかでも良いのです。
あるいは、端的にストレス、と言っても良いです。
しっくりくる言葉が見つかりそうでしょうか?
名前をつけたら、ーーくん、や、ーーちゃん、と呼んであげましょう。あだ名を付けてあげても良いですよ。
仕上げ
ここまで来たならば、ほぼ成功です。
その名前を呼んであげて、頭の中で、座布団や椅子、あすいは他にくつろげるもの何でも良いので、その子にそっと差し出し、
“大丈夫、そこにいて良いんだよ。ゆっくりしていきなよ。ちょっと出かけて、戻ってくるからね”
と伝えてあげてください。
因みに私は実家にある赤い座布団をいつも差し出します。
そして、静かにチョコレートに意識を向け直してください。
距離を取るということ=概念化=言語化
何をやってきたのか、というと、表題のとおりです。先ずは距離を取り(相対化)、名前を与えてあげて(言語化による概念化)、扱いやすいものに変えてあげるのです。場合によっては、距離を取るだけでも、心が軽くなります。それは、あの“まきこまれた感じ”から、一歩抜け出せるからです。
なぜ手書きを進めるかというと、手書きの速度が、概念化にはちょうど良いからです。そして、自分自身との会話、自分自身へのカウンセリングには、私にとって非常に有益でした。
少しむずかしい言葉を使いましたが、フォーカシングの技術を転用して行おうとしていることは、得体のしれないあの感覚を、扱いやすいものに変換してあげることです。
実際のフォーカシングは、より深く潜り込み、そしてカウンセラーとのやり取りの中で心の回復を目指すものです。下に参考図書のリンクを貼りますので、ご参照ください。
考えないようにすることは、考えることと同義
今回の最後に、なぜ、名前をつけたその感情に声掛けを行うかについて、です。
最後のエクササイズです。
これから、1分間、決して雪山について考えてはいけません。では、どうぞ。
さて、いかがでしたでしょうか?一瞬で雪山が目の前に浮かびませんでしたか?考えないようにする、ということは、ある考えが浮かんだ上で、それを考えないようにします。すると、まず最初にその考えが浮かびます。そして、考えないようにしよう、と頑張るほど、”考えないこと”を考え続けるために、結果的にある考えに固執してしまうのです。
一方で、同じ考えを持ち続けることもできないことを、先程述べました。こころはさまようもの、と。
名前をつけて、居心地良い場所に、その感情や考えを落ち着かせてあげると、自然とその子達はどこかに行ってしまいます。もちろん戻ってくることもあるでしょう。そのときは、“あ、戻ってきたんだね。どんな感じだった?そっかそっか。そしたら、またゆっくりしていくと良いよ”と、伝えてあげてください。この繰り返しをすること、“そっと手放す”練習を続けることが、マインドフルネスの肝と考えます。
気づきに満ちた生活を送ることができれば、確かに感謝や謙虚の精神が生まれてきます。しかし、先ずは”そっと手放す”ことを覚える。これが、マインドフルネスの、あるいはこれから認知行動療法を進めていくうえでの重要なステップになりますので、心と身体に少し余裕があるときに試してみてくださいね。
参考図書を以下に記載します
マインドフルネスは本当に流行していて、沢山の方が書かれています。しかし、きちんとしたものを読んでください。理由は、きちんとした治療プログラムが、ジョン・カバットジンにより確立されているからです。また、仏教の目線からのものもおすすめしません。特に原始仏典のものはまやかしです。ジョン・カバットジンは、その着想を鈴木大拙から学んだと言われています。つまり、禅です。それ以上に遡るのは、もはやオリジナルを無視した行為です。どのように解釈しても自由ではありますが、仲間に勧めはしません。どうか、少し高くても、きちんとしたものに触れていただきたいです。
フォーカシングについては、池見先生のものしか触れていません。そのごジェンドリンの原書を読みました。しかし、上記のような内容であれば、池見先生の本がわかりやすく、かつ、読むだけで癒やされてしまいます。私は涙が出ました。
①実践に最初から取り組みたい方にはこの一冊
②理論からじっくり学びたい方には次のどちらか
③フォーカシングについての本