【国連、障害児の分離教育中止要請】米国大学院でインクルーシブ教育を研究してきた私が思うこと
【ひと目でわかる!】日本の教育の問題点
上のサムネイルの絵を見てください。
これは私の大好きな有名なイラストなんですが、
この一枚だけで日本の公教育の現状を的確に表しています。
そしてオリジナルの挿絵には以下のような引用文がついています。
これが日本の公教育、というか日本の教育界全体の現状です。
このような基準で子供たちを評価しているのです。
そんな日本に対して、国連から
「インクルーシブ教育をやりなさい!」
と圧をかけられたワケです。
もし日本政府が、いつものやり方、つまり
「体裁を整えるだけの戦略」
をとり
「ほら、日本もインクルーシブ教育やってますよ!」
的なことしかしないのであれば、日本の子どもたちは今以上に苦しむことになってしまいます。不登校の子どももさらに増えていくでしょう。
インクルーシブ教育&研究が進んでいるアメリカや国連の言う、
「本物のインクルーシブ教育」
を進めていくには、日本の教育システムを抜本的に変える必要があります。
そしてシステムだけでなく、今まで私たちが教育に対して抱いてきた
「価値観」
さえも変えなくてはならなくなります。
これは実際、とんでもなく大変なことです。
【何が違うの?】日本の考え方と国連の考え方
日本の教育業界だけでなく、日本社会全体と言えますが、
私たち日本人が考える
「平等」の価値観
と
国連が言う「平等」
とは異なるのだろうと思います。
日本の平等=みんな同じ
とにかく日本は、
見た目で
「みんな同じ」ことを「平等」
と考えている人が多いです。
例えば、学校教育では、制服や髪型など、
生徒の外見を同じにする校則は言うまでもなく、
生徒の年齢が同じであれば、学年も同じ。
同じ学年であれば、同じ教材で同じことを学ぶ。
これが日本全国で行われている公平な公教育です。
そして、学校の中でも、個人の得意不得意に関係なく、
同じ学年であれば、勉強する内容も、宿題の内容も、宿題の量も、
すべて同じに統一されているのです。
もし優秀な子が先生に
「これは私には簡単すぎるから、自分で用意した教材で勉強していいですか?」
と先生に聞けば
「不公平だからダメ」
と言われます。
もし勉強が苦手な子が、
「これは私にとって難しすぎるので、もっと基礎的な教材を使って勉強しても良いですか?」
と先生に聞けば
「不公平だからダメ」
と言われます。
その結果、このような生徒の宿題は、先生が期待するレベルに達していないかもしれません。
するとそのような生徒は
関心意欲:C
知識理解:C
と記録され、成績が悪くなります。
先生だけでなく、おそらくほとんどの日本人が、
これが教育の平等
だと考えているのではないでしょうか。
国連の平等=みんな同じ「機会」を持つこと
私がアメリカの大学院で学んだ
インクルーシブ教育の価値観と、国連の価値観は
おそらく同じものだろうと想像します。
本当のインクルーシブ教育とは?
本当のインクルーシブ教育とは、
「教育の機会の平等」のことなんです。
みんなが同じように「学ぶ機会」を得られることを言っているのです。
インクルーシブ教育は、
特別支援の子どもたちを、
ただ通常学級に在籍させて、
同じ場所で勉強すればよい!
と主張する教育法ではないのです。
理想論に聞こえますか?
今、学校で何が起こっているの?
私は公立中学教員や公立小中学校の巡回指導講師の経験があるので、
今、学校がどのような状況なのか知っています。
とにかく学年が上がるにつれて学力の差が大きくなっていきます。
たとえば、こんな感じです。
優秀な生徒の場合
このような学校生活を毎日何年間も費やす事による弊害は?
その結果
勉強が苦手な生徒の場合
このような学校生活を毎日何年間も費やす事による弊害は?
その結果
◆ その子は一生、自分はバカだと思いながら生きていくことになります。
まさに上のサムネと同じことが起こるのです。
かわいそうだと思いませんか??
ちなみに、
素行が悪くて授業についていけない生徒たちも、自分たちに合った教え方や教材で勉強すると、とってもイキイキと学べるんです。
本当は彼らだって学びたいんです!
新しいことを学んだり、できるようになると、嬉しいんです!
【通常学級】優秀な生徒と勉強が苦手な生徒の割合
学校、学年、クラス、教科、地域性によってばらつきはありますが、
私の感覚では、公立小学校で考えてみると、
35人クラス中、
優秀な子が3~5人、
特別支援が必要だが、通常学級に在籍し、適切な支援を受けていない子が1~3人、
授業についていくのが大変なグレーゾーンの子が10人程度いるように感じます。
つまり、約半数の子どもたちが、学校で、自分の能力を伸ばせるような適切な教育の機会に恵まれていないのです。
私が公立中学校の英語教師だったころは、
定期試験の成績分布はスーパー二極化していました。
0~20点の生徒と80~100点の生徒がほぼ同数で、
過半数を占めていました。
ちなみに、
0~20点は「全く理解していない」
と言う意味です。
20点くらいは、記号を適当に埋めれば取れるように作っていましたので。
【常識を覆す】全く違うタイプの学校を作りたい
先日、上のタイトルの記事を書きました。
私はこのような、日本の学校の現実をずっと見てきました。
そして、自分の子どもが通っていたアメリカの公立小中学校や、米国大学院で学んだインクルーシブ教育とをどうしても比べてしまうのです。
そして、いつももどかしく、残念な思いをしていたので、
「全く違うタイプの学校を作りたい」
と思っているのです。
日本政府や日本の教育業界を責めることはできない
だからと言って、文部科学省をはじめ、日本の教育界のトップにいる人たちを責める気にもなれません。
だって、彼らが知っているはずがないのですから!
文科省の役人を海外の大学院に派遣して、インクルーシブ教育を勉強させたり、何年か現地に住んで自分の子供を現地の学校に入れたりなど、実際に地域と関わったりしない限り、おそらくわからないと思うのです。
日本にいながら「インクルーシブ教育」の資料だけで勉強したとしても、「理想論だな」
とか
「こんなの不可能に決まってる」
って思ってしまうと思います。
【ちょっとご紹介】インクルーシブ教育のシステム改革に必要なモデル
でも、いろいろなやり方があるんですよー。
インクルージョンには学校システムの改革が必須で、
MTSS、RTI、PBIS、Ci3Tなどと呼ばれるモデルを使って、教育システム全体の改革と、
Direct Instruction(DI)などのABA(応用行動分析)がベースで作られた指導法を使うと特別支援の子供たちもギフティット(天才児認定の子)の学力の両方が上がったと言う研究結果がたっくさんあるんです。
「政府が何かやってくれるだろう」
とただ待っているだけでは、何も変わらないので、
民間の力で変えていきたいですね。
そのために色々計画しているところです。