
ビタミンE
概要
ビタミンEは、体内の細胞を酸化から守る重要な脂溶性の抗酸化ビタミンです。4つのトコフェロールと4つのトコトリエノールの総称で、生体膜の脂質を酸化から保護し、細胞の健康維持に不可欠な栄養素です。
名前の由来は、ギリシャ語の「子どもを生む(tocos)」「力を与える(phero)」「アルコール(ol)」から来ており、抗不妊因子として発見されました。
特に植物油、ナッツ類、緑黄色野菜などに多く含まれ、他の脂溶性ビタミンと同様に、油と一緒に摂取することで効率よく吸収されます。
1日の推奨量は成人男性で6.5mg、女性で6.0mgです。
基礎知識
化学的性質
脂溶性ビタミンの一種
トコフェロール類とトコトリエノール類の8種類の総称
生体内では主にα-トコフェロールとして存在

体内での役割
抗酸化作用
フリーラジカルによるダメージから細胞を守る
生体膜の油に溶けて存在し、膜を酸化から保護
細胞膜保護
生体膜が酸化されると過酸化脂質が増えて膜を傷め、異常細胞を形成
ビタミンEはこの酸化を防ぐ働きがある
欠乏症
溶血性貧血
網膜症
不妊
神経障害
心臓病
(ただし欠乏症はほとんど見られない)
最新の研究知見
トランス脂肪酸と抗酸化作用に関する研究
植物油脂の酸化により脂質過酸化反応が連鎖的に起こる
ビタミンEは脂質の代わりに自らが酸化されることで、この連鎖反応を阻止する
生体膜の油に溶けて存在し、膜を酸化から守っている
生体膜が酸化されると過酸化脂質が増えて膜を傷め、異常細胞を形成することを防ぐ
相互作用
脂質との関係
脂溶性のため、脂質の存在が吸収に不可欠
腸管での吸収には胆汁酸が必要
コレステロール不足、胆管閉塞、消化管不良(慢性的な下痢など)では吸収不良が起こる
肝臓から運ばれる際、リポタンパク(カイロミクロン)と結合するため、脂質やタンパク質摂取も重要
食品加工・調理による影響
加熱による損失がある
油の酸化により減少
食品の保存状態により含有量が変化
体内での代謝
肝臓でα-トコフェロール転移タンパク質と結合
血中では主にLDLコレステロールによって運搬
組織への取り込みには脂質の存在が必要
【機能】
抗酸化作用
フリーラジカルによるダメージから細胞を守る
生体膜の脂質過酸化を防止
過酸化脂質による細胞膜の損傷を防ぐ
活性酸素により有害な過酸化脂質が生成されるのを予防
酸化ストレスから体を保護
生体膜の保護
細胞膜の構造維持に重要
膜の流動性を適切に保つ
細胞の正常な機能を維持
生体膜中の油に溶けて存在し、膜を酸化から守る
脂質の代わりに自らが酸化されることで、連鎖反応を阻止
がん予防作用
抗酸化物質として活性酸素の発がん作用を抑制
異常細胞の形成を防ぐ
細胞の正常な分化を促進
循環器系の保護
血管壁の酸化を防止
動脈硬化の予防に寄与
心臓病のリスクを低減
【不足すると…】
細胞レベルでの影響
生体膜の酸化による細胞損傷
過酸化脂質の増加
細胞膜機能の低下
DNA損傷のリスク増加
全身性の症状
溶血性貧血
網膜症
不妊
神経障害
心臓病
免疫機能の低下
筋力低下
疲労感の増加
長期的な健康リスク
がんのリスク上昇
動脈硬化の進行
老化の促進
生活習慣病の発症リスク増加
ただし、通常の食事をしている場合、重度の欠乏症はまれです。バランスの取れた食事を心がけることで、必要量は十分に摂取できます。
【摂取した方がいい人】
生活習慣による必要性が高い人
喫煙者(酸化ストレスが多い)
運動量の多い人(活性酸素の産生増加)
ストレスの多い人(酸化ストレスの増加)
都市部在住者(環境由来の酸化ストレス)
健康状態による必要性が高い人
心臓病のリスクが高い人
動脈硬化が気になる人
免疫機能が低下している人
疲労を感じやすい人
不妊治療中の方
食生活による必要性が高い人
多価不飽和脂肪酸を多く摂取する人
植物油を多用する人
脂質の酸化が懸念される食品を多く摂取する人
【どんな食材に入ってる?】
植物性油脂
サラダ油(1.2mg/100g)
オリーブ油(1.0mg/100g)
ごま油(0.9mg/100g)
米油(0.8mg/100g)
種実類
アーモンド(26.2mg/100g)
ヘーゼルナッツ(21.0mg/100g)
ひまわりの種(20.8mg/100g)
かぼちゃの種(19.5mg/100g)
ピーナッツ(9.3mg/100g)
野菜類
かぼちゃ(2.1mg/100g)
アボカド(1.8mg/100g)
ほうれん草(1.5mg/100g)
ブロッコリー(1.2mg/100g)
その他
うなぎ(3.0mg/100g)
鶏卵(1.7mg/100g)
魚卵(1.5mg/100g)
保存・調理のポイント
光や熱に弱いため、油は暗所保存
酸化を防ぐため、開封後は早めに使用
過度な加熱は避ける
新鮮な食材を使用する
【摂取量】
■1日の推奨量(日本人の食事摂取基準2020年版より)
成人の目安
男性:6.5mg/日
女性:6.0mg/日
■食材からの摂取目安
以下の食材で1日の推奨量が摂取可能
植物油
・サラダ油 大さじ1杯(12g): 1.2mg
・オリーブ油 大さじ1杯(12g): 1.0mg
ナッツ類
・アーモンド 30g: 7.86mg
・ヘーゼルナッツ 25g: 5.25mg
・ピーナッツ 50g: 4.65mg
野菜類
・かぼちゃ 200g: 4.2mg
・アボカド 100g: 1.8mg
・ほうれん草 200g: 3.0mg
その他
・うなぎ 100g: 3.0mg
・鶏卵 2個(120g): 2.04mg
■1日の具体的な摂取例
朝:アーモンド(10g)
昼:サラダ油(大さじ1)+ほうれん草(100g)
夕:かぼちゃ(100g)+オリーブ油(大さじ1)
→合計約6.5mgのビタミンE摂取が可能

【摂りすぎると…】
過剰摂取のリスク
・出血傾向の増加
・抗凝固作用の増強
・ビタミンKの作用阻害
・頭痛
・吐き気
・疲労感
サプリメントでの注意点
1日の上限摂取量
成人で800-1000mg
特に以下の場合は注意が必要
抗凝固薬服用者
出血性疾患がある人
手術予定がある人
相互作用による影響
・抗凝固薬との併用で出血リスク上昇
・ビタミンK依存性凝固因子の活性低下
・他の脂溶性ビタミンの吸収競合
長期的な影響
・脂溶性のため体内に蓄積
・徐々に症状が現れる可能性
・腎臓や肝臓への負担増加
【効率の良い食べ方】
脂溶性ビタミンの特性を活かした摂取方法
適度な油脂と一緒に摂取(吸収率アップ)
食事の最初に油を使った料理を摂取
1日3食に分けて摂取(一度に多量摂取しない)
調理のポイント
油は新鮮なものを使用(酸化を防ぐ)
過度な加熱を避ける(150度以下が望ましい)
酸化を防ぐため開封後は冷暗所で保存
サラダ油は3ヶ月以内に使い切る
組み合わせのコツ
ビタミンCを含む食材と組み合わせる(相乗効果)
緑黄色野菜と油を組み合わせる
豆類やナッツ類を間食として活用
【レシピ】
■アーモンドと緑黄色野菜のホットサラダ
(1人分のビタミンE摂取量:約4.5mg)
材料(2人分)
アーモンド:20g
ほうれん草:200g
かぼちゃ:100g
オリーブ油:大さじ1(12g)
塩:少々
黒こしょう:適量
作り方
かぼちゃを一口大に切り、電子レンジで3分加熱
ほうれん草を3cm幅に切る
アーモンドを粗みじん切りにする
フライパンにオリーブ油を熱し、かぼちゃを軽く炒める
ほうれん草を加えて手早く炒める
最後にアーモンドを加えて軽く炒め、塩コショウで味を調える
【専門用語】
・トコフェロール: ビタミンEの一種で、強い抗酸化作用を持つ化合物
・フリーラジカル: 不対電子を持つ不安定な分子で、細胞を傷つける原因となる物質
・脂質過酸化: 脂質が酸素と反応して変性する現象で、細胞膜の損傷を引き起こす
・抗酸化作用: 酸化による物質の変性や劣化を防ぐ働き
・生体膜: 細胞や細胞内小器官を包む膜構造
・カイロミクロン: 腸で吸収された脂質を運搬するリポタンパク質の一種
・リポタンパク: 脂質とタンパク質の複合体で、脂質の運搬に関与する
▼トレーナーについてはこちら
↓↓↓
いいなと思ったら応援しよう!
