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リクリット・ティラヴァニからの連想→李 禹煥(直島,柱の広場)-森の芸術祭@岡山(-11/24)03

 友人と「森の芸術祭 晴れの国・岡山」(-11/24)を訪ねた、短い車の旅の記録、続き。



たおやかに、風をはらむ

 閉庭時間ぎりぎりに訪れた、衆楽園。

 急ぎ、リクリット・ティラヴァニの作品展示場所へ。

 一定の間隔をおいて展示されている、7枚の、のれん。

 風にそよぎ、時折、お互いに干渉しあう。

 建物の端で風に吹かれながら、友人と話した。

リクリット・ティラヴァニ

1961年、ブエノスアイレス(アルゼンチン)生まれのタイ人アーティスト。
旧来の展覧会形式を否定し、料理や食事、読書といった日常的な行為の共有を通した社会的交流を提示する活動で知られている。

その作品は、芸術品の優位性を拒絶する環境を創出し、モノの利用価値や、単純な行為と共同体内の相互扶助を通じて人々を互いに結びつけることに焦点を当てるとともに、労働や技巧にまつわる既成概念の打破を試みる。

現在はコロンビア大学芸術学部の教授を務め、アーティストや美術史家、キュレーターが参加するコレクティブ・プロジェクト「Utopia Station(ユートピア・ステーション)」の創設メンバーでもある。チェンマイ(タイ)近郊に拠点を置く環境教育プロジェクト「The Land Foundation(ザ・ランド・ファウンデーション)」の設立にも協力した。

同上

  展覧会で「ある状況」を作り出す作家さん。たとえば、パッタイ(タイ風やきそば)をふるまうというように。

ティラヴァニは、展覧会の中で「ある状況」を作り出し、来場者をそこに参加させることで、かれらが互いにどう影響し合っているのかを感じたり考えるよう促す。彼はこれを「プレイ(play)」と呼ぶが、コロナ禍によって人と人の関わり(あるいは接触を避けること)が大きく意識されるようになって以来、ティラヴァニの「プレイ」はさらに大きな意味を持つようになったと言える。

同上

 そこからの繋がりで?なのか、森の芸術祭でも。

リクリット・ティラヴァニ氏プロデュース「ハレノクニ弁当」を販売します!

「森の芸術祭 晴れの国・岡山」の参加アーティストであるリクリット・ティラヴァニ氏が、芸術祭の作品の一部としてプロデュースする弁当を「ハレノクニ弁当」と題し、販売しますので、お知らせします。
リクリット・ティラヴァニ氏が、真庭市勝山在住の染織家・加納容子氏による暖簾などを用い、衆楽園の迎賓館等の空間をプロデュースし、その特別な空間で「ハレノクニ弁当」を食べることができます。

同上

リクリット・ティラヴァニと李禹煥

 話しながら、話題は、李禹煥(Lee Ufan)作品との対比に及んだ。

 関係性、というコンセプトはとても似ているのに、リクリット・ティラヴァニの作品は、さきに書いた「たおやか」という表現が、わたしには最もしっくりくる気がする。

 生まれた時代性、国の違いと文化。さまざまなことに話題が及んだ。


 衆楽園での、リクリット・ティラヴァニ作品はもうひとつ。

 「無題 2024 (水を求めて森を探す)」。ちょうど閉館されたところで、外からしか鑑賞できなかったのだけれど。


翌々日の、李禹煥美術館で

 その2日後。一人旅で直島に渡って、

 李禹煥美術館の「柱の広場」で時間を過ごした。

1960年代後半から「もの派」と評される現代アートの動向の中で中心的な役割を担ってきた李禹煥。

李禹煥美術館の作品は、静かに繰り返される呼吸のリズムにのせて描かれた筆のストロークの平面作品や、自然石と鉄板を組み合わせ、極力つくることを抑制した彫刻作品など、空間と融合した余白の広がりを感じさせる代表作です。

同上

 訪れるたびに、発見のある作家。

 傾きかけた陽。瀬戸内海を背に立つ「無限門」。

 「関係項-休息または巨人の杖」。

 作品は、そこにある1個の「もの」個体(個別具体的な特徴とか質感とか)「ではなく」、ものとものとの「関係性」を示す。

 硬質なもの同士の関係。それには時折、暴力を彷彿とさせるような関係もある(そう彷彿とさせる作品もある)。

 わたしにとって「関係」とはどんなものかといえば、やはり、李禹煥の示すような、硬質なものどうしの関係を思い浮かべてしまう。これもやはり、時代と文化背景なのかもしれないな、と思う。

 対して、リクリット・ティラヴァニ作品の、一定間隔を置いて時折やさしくなでるようにかかわりあう関係性。

 関係性の表現を対比させることで、関係ということそのものの概念のようなものが、自分のなかに深く沈んでいく。

 すぐれた作品から気づきを得て、友人と語らい、さらに認識を新たにしていく。静かで豊かな時間に、感謝している。



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