よく晴れた、6月某日。
風能奈々「このために生まれた」2024.6.8 [Sat.] - 6.29 [Sat.]
アクリル絵の具から生まれる細密な世界
遠目からは、何かきらめいている画面、としか見えないけれど、
近寄れば、その緻密さに息をのむ。
解説にあるように、絵を前にすると、まるで金属のプレートを掘ったかのような、あるいは彫刻であるかのような、はたまた織物なのではないか、といった印象をうける。
読んでもなかなか信じられない。作品たちがアクリル絵の具のみで生み出されているという事実に驚愕する。
「川根本町で見た星」
本展の紹介のなかに、作家自身が作品について触れた箇所があった。
星たちがきらめく
「星」たちのモチーフは、展示作品たちのなかでも、きらきらと光を放つように見えた。
「きれいなドアを見つける」
作家が、同じように言及していた作品は、
とりとめのない日々の美しさ。まさにその世界が、壁いっぱいに広がる。
1作品ごとは小品で、全体で1日を示すような、ある日ある世界の一瞬を、小さく切り取ったもののようにも感じられた。近寄って熱心に、じっと鑑賞している人が多かった。
「このために生まれた」
「このために生まれた」が本展のタイトルで、さきの引用をもう一度引けば、
という作家の人生そのものであり、大きな自己肯定が伝わってくる。
いとおしい日々。愛と自己肯定。
美しい世界のなかに作家はいて、その筆を通じて、きらきらした世界が観る者のなかにも零れ落ちてくる。