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限りある未来,人々の営み -リム・ソクチャンリナ「Letter to Water (Tanle Sap Lake)」(-11/16) [AWT]11
アートウィーク東京(11/7-10)。
巡ったギャラリーとの出逢いの記録、続き。
国立新美術館(正面)の坂を下りると
目指すギャラリーは、ミッドタウン六本木近く。国立新美術館から坂を下りた場所。
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道の突き当りの、建物1階。注意していないとわかりづらい。
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日動コンテンポラリーアート。
リム・ソクチャンリナ「Letter to Water (Tanle Sap Lake)」
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リム・ソクチャンリナ(1987年カンボジア・プレイベン生まれ、プノンペン在住)は、写真、映像、パフォーマンスなど多様な手法を用いて、現代のカンボジアにおける政治や経済、環境、文化的変化やその問題に焦点を当てた作品を発表している。巨大なグローバル資本と様々な政治的思惑によって急速に変化する社会や風景を日々記録し、これまでの地域のコミュニティや文化、自然が失われていく未来に警鐘を鳴らすのである。今回は個展にあわせて新作を発表する予定。
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水面に映し出される光景
天井は鏡。作品が映りこむ明るい空間。
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中央に置かれているのは、まるでこれから洗濯でも始まるかのような、大きめの手洗。
覗き込むと、水面に、東南アジアのどこかの集落の風景が浮かび上がっているように見える。
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種明かしは、天井の映写機。
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水面を、スクリーンに見立てて。
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人々の毎日の営みが、音とともに会場に響く。
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静かな空間に、生きているものの気配を醸し出している。
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のどかな風景の裏側に
これらの作品を、のどかな風景の再現とだけ捉えていいのかといえば、そうではないという気が強くしてきた。作品のところどころに、何が言いたげな作家の気配を感じないことはない。
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メコン河から内陸へ120キロほど遡上したシェムリアップ近郊には、東南アジア最大のトンレサップ湖が広がっています。“伸縮する湖”の別名を持つ同湖は、水量が増す雨季(6月~10月)にはその面積を乾季の3倍以上にまで広げ、琵琶湖の約4倍相当となる1万6000平方キロにも達します。洪水期にメコン河から水を飲み込み、渇水期には吐き出すことで、いわば天然ポンプとしての機能を有することで、”カンボジアの心臓”として非常に豊かな生態系を育んでいます。メコン河流域に生息する淡水魚約1,200種のうち、200種以上が確認されています。
また、トンレサップ水系の漁獲高はカンボジア内水面漁業(河川や湖沼での漁業)総水揚げ量の約半分を占め、同国民のたんぱく質摂取量の60パーセントを賄うとさえいわれています。
ところが近年、こうした豊かな自然の恵みに看過できない異変が起きています。雨季を迎えても以前のように湖水が増えず、水質汚濁は周辺住民の健康や飲料水供給に深刻な事態をもたらしているのです。また、パーカーホ(コイ科最大の魚で、カンボジアの国魚)やメコンオオナマズといった大型の魚類は姿を消し、漁獲高も減少の一途を辿っています。
その主たる原因は、地球温暖化などの気候変動であることはいうまでもないでしょう。また、「一帯一路」を掲げる中国からの資本流入と大規模開発によって造成されたダム群や、森林伐採、そして鉱石採掘も環境破壊に大きな影響を及ぼしています。加えて、電気ショックや薬品、モーター・ボートやポンプを使用した経済効率を最優先する違法漁業の横行も無縁とはいえません。
こうした社会問題に対して大いなる関心を寄せるリムは、10年以上にわたってコンポンプルック集落で漁業を営む家族のもとを訪ね、取材し続けています。今回ncaで開催される個展「水のエレメント:トンレサップ湖は浮いている(The water element:Tonle Sap Lake is floating)」で発表される一連の作品では、トンレサップ湖とその氾濫原や浸水林に生息する多様な生物たち同様に、今や生存の危機に立たされている同湖を生活基盤とする人々の日々の暮らしに焦点を当てています。
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この、見えそうで見えない、何かもやのかかった画面。見えそうで見えない、その視界のモヤモヤ。
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そんな不透明な未来を前にして、しかし湖はただ美しく、人々は日々の生業を今日も繰り返していく。
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ギャラリー内を何周も何周もするうちに、自分のなかのリズムまでもが変わってくる。ゆったりと、ゆったりと。まるで水の上に漂うかのように。
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