身体性,関係性とSoh Souen(ソー・ソウエン) -既に終了した2つの展示から
昨年末と1月に、Soh Souen(ソー・ソウエン)の作品を観た。
「Let us see what you see.」(-2/17)
個展「Let us see what you see.」(-2/17)@銀座 蔦屋書店
展示室に、均等に展示された大きなポートレート。
網がかかったような、または欠けたようにも見えるが、
近づいてみれば、絵を構成しているのはピクセルだ。
貼り絵のようにも見える。
ぼやけたように見えるポートレートのピクセルは、その作品ごとに異なる。鑑賞していると、ふしぎな感覚を呼び起こす。
たとえばそれが、親しい人のポートレートだったとしても、このように不鮮明なピクセルの集合体で表現されたほうが、その人らしくはないだろうか、とか。
他者について自分は、果たしてこのくらいの解像度であっても、知っているとはいえるのだろうか、とか。
京都精華大学55周年記念展(-2023.12/28)
京都精華大学55周年記念展「FATHOM—塩田千春、金沢寿美、ソー・ソウエン」(2023.11.17 - 2023.12.28)
年末に訪ねたこの展覧会では、
2つの展示室に、インスタレーション作品が展示されており、
香り(におい)を介した他者との関係性や(そこには、パンデミックが及ぼした数々の影響を含む)、
もっと深く直接的に、「臍」を正面からとらえて、身体性、他者との関係にふみこんだものもあった。
言葉の牢獄から抜け出すための改名
作家自身のウェブサイトからのリンクで、Soh Souenの2020年時点でのインタビュー記事を読んだ。作家はこの時点でSoh Souenに改名しており、「本名とは、その血筋や土地、さまざまな要素を持ち合わせているので、実際に改名をして、さまざまなことから精神的に距離を置くことができたように思います」という言葉は、作品とのつながりも感じた。
Soh Souenは、言葉の限界を超えた名前の変更を通して、自己のアイデンティティと社会との関わり方を再考し、自分自身と作品を通じて、社会に対して何を伝えられるかを常に問い直しているように感じられる。
実は、身体性からの連想で、Soh Souenをずっと、女性性を追求する女性アーティストだと思い込んでいた。時系列で作家を追うことの大切さも肝に銘じつつ。