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暁に薮を睨む

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刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
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2022年9月の記事一覧

詩:『鳶』

詩:『鳶』

『鳶』

廃墟に立つ少女は
見つめている
じっと動かず
迷いのない瞳で

積乱雲の
灰色の底
穿つ弾痕



花が手向けられたあの朝の
渋谷駅のホームで社会を
睨みつけていたわたしの
両頬をパンパンと叩いて
「頑張れよ!」と言った
見知らぬおばさん

わたしたちが求め
いつか徒党を組んだとき
何かが分断されたのだ
わたしたちはそれ以降
鏡と闘っているのだ



永遠に近しい
女性的なものが

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詩:『軛』

詩:『軛』

『軛』

野性的な本能のままに、
生きることが高尚か否か、
思考を巡らせる必要はあるか。
氷上に卵を温めるペンギンの直立、
木陰で休息するライオンの息遣い、
野生生物の佇まいを見れば、
一目瞭然ではないのか。

詩:『ネクロマンサー』

詩:『ネクロマンサー』

『ネクロマンサー』

今日も命の価値が重い
もとい……躰が重い
朝ごはんを食べて
満員電車で汗ばんで
出社QRコードをピッ
デスクでExcelを起動して
あなたは今日は外回り?
あなたは今日はコールセンター?
この会社って何の会社だっけ?
このお弁当誰が作ったんだっけ?
裏で糸を引いている者がいる
世界にオーバーロードが数人いて
既得権益で富を独占している
「それは質の悪い陰謀論です!」
「あなた

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