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詩:『鳶』
『鳶』
廃墟に立つ少女は
見つめている
じっと動かず
迷いのない瞳で
積乱雲の
灰色の底
穿つ弾痕
鳶
花が手向けられたあの朝の
渋谷駅のホームで社会を
睨みつけていたわたしの
両頬をパンパンと叩いて
「頑張れよ!」と言った
見知らぬおばさん
わたしたちが求め
いつか徒党を組んだとき
何かが分断されたのだ
わたしたちはそれ以降
鏡と闘っているのだ
鳶
永遠に近しい
女性的なものが
わたしたちを牽き
昇ってゆく
わたしたちに
見えるものは
全て何らかの
未知なる概念だ
廃墟に立ち尽くし
孕んだ少女は
睨みつけている
じっと動かず
迷いなど無く