澱
行き場のない想い
煙になって浴室の天井で
黒い塊になる
見下ろした黒い塊が
ポタポタと
ドス黒い雫を垂らす
湯船の上に
ぷかぷか浮かぶ
黒いかたまり
鈍い音を立てながら
水面を浮いたり
沈んだりしている
深い深い闇が降りて
天井から見下ろして
深い深いため息をつく
どうしょうもない
心の澱が
黒い塊と混ざりながら
ぷくぷくと浮かんでいる
うわぁぁぁーー
自分の心の澱は
私の手からスリ落ちて
掬い上げることもできない
大丈夫大丈夫
大したことなどない
うわぁぁー!
浴室の湯船の中で
叫ぶ声が反響して
大丈夫が
私の体を刺してくる
太刀打ちできない
弱い私の
不甲斐なさに憤り
憤りながら泣いている
何をしたい?
どうしたい?
わからないままに
湯船の中
天井を見つめている
湯船から溢れ出した
心の澱がこびりついた黒い塊
ありとあらゆる
洗剤をかける
こいつめ!
消え失せろ!
小さくなった塊は
排水溝の中で
断末期の叫びをあげた
泡が勝ちほこりぶくぶくと笑った
湯船に残った塊は
水面で浮いたり沈んだり
私を見上げて
『…』
引き攣った声を出す
水栓を一気に引き上げた
くるくる円を描きながら
塊は排水溝へと流れていく
“無駄だ俺たちは消えない”
断末期の叫びの中で
私はなすすべなく
くるくる渦巻く流れを眺めて
ため息をつく