10月31日のハロウィンが終わると、街は12月25日のクリスマスへと一斉に歩みを進める。 一大イベントを有する10月と12月に挟まれて、徒然としている11月がたまらなく好きだ。 自分が誕生した季節に教わった教訓。 「秋とも冬とも言えない不安定な気温の中で いろんな”関係”を見直そう。」 金木犀の香りが落ち着いてから、朝晩の息が白くなり始めるくらいの時期がおすすめ。 寒さによる物恋しさに、狂わされるまえに。ね。
「ミラー効果って知ってる?君、僕のこと好きでしょ?」「そういうの無理なんだよね。」 清々しい春の日の朝、私は約1ヶ月前に浴びた最悪な言葉を思い出していた。 それもそのはず、物書きの彼が、昨夜更新した短編の中で、嫌なキャラクターに私の苗字をあてていたのだ。 確かにあなたの言葉は魅力的で、そんな風になりたくて、意識してしまっていたけど、決して真似したわけでも、邪な気持ちがあったわけでもない。 求められたら言葉の感想を伝えたり、電話したり、写真を送ったりした。決して一度きり
江ノ島の弁天橋で「それぞれどちら側にいればしっくりくるか」を試しあった僕ら。 僕は人生で一度も手を繋いだことがなかった。 僕も君も右利きで、利き手を塞がれるのがお互い嫌だったね。 左側を歩かないと危ないから、と言って強引に僕が右手を取ると、君は不服そうにしていたね。 それから数年。 「夫が左で、妻が右ね。書類にまで右側を強制されると思わなかった。」 「それを知っていたから、あのときああしたんだよ。」 君はあのときと変わらず、また不服そうにして、 名前を書き始めた。
駅前の変な像の前ではじめて待ち合わせて、カフェに行ったあの日から早数年。 いつだって君には敵わない。 その事実はじわじわとわたしを蝕み、わたし自身を見失わせていた。 そんな日々に訣別し今年を清算するために、あの日のカフェに君をなんとか呼び出して、今日を迎えたってわけ。 サードプレイスを謳うこのカフェも、さすがに今日のわたしを落ち着かせてくれはしないみたい。 最後くらい、記憶に残るなんとかフラペチーノを飲みたかったけど、結局いつものやつに落ち着いた。 片耳だけイヤホンを
数年前のことです。 某人気俳優のアイコンを使っているお兄さんにDMで話しかけられました。 「言葉の雰囲気が好き」で声をかけてくださったそうです。 そのお兄さんこそ、言葉が素敵で話の扱いもお上手でした。当時はお返事を渇望しており、アプリのアイコンに赤いバッジが光るだけで喜びに満ち溢れてしまうのでした。 実際にお会いしたら、なんとアイコンの人気俳優とそっくり。顔もスタイルも声も似ていて、何なら人気俳優ご本人よりも、私の目には素敵に映っていたのでした。 しかしお兄さんとの連絡
これは、限りなく私の思考に近づいちゃうお話。 髪をのばし続けて5年くらい。 今の私をみて「髪が短い」と表現する人はいない。 きっかけは特になかったと思っているけど、 心のどこかで髪がきれいなあの子に 憧れていたんだと思う。 ところで「髪が長い人」をみた多くの人が無条件にぶつける質問、 「髪、どこまで伸ばすの?」問題。 この質問の最適解はなんだろうね。 私の場合、(だるいなあって思いながら) 「ヘアドネーションしたくて!もう少しかなあ」と返すようになった。 実際はそんな
日比谷駅。 お気に入りの雑誌を求めて、 いつもの本屋へ向かう最中。 多くの人が仕事を終えて家路に向かう中、 視界の遠いところで、懐かしい姿を捉えた。 クールな雰囲気とは裏腹に、温かい人だった。 いつも黒い服に身を包み、タバコを吸いながら趣味について語ってくれた。 時折、タバコの煙とともに影が満ちていき、 力無く笑う姿も魅力的だった。 「別にクズだって罵ってあげてもいいけど、悪いと思っていないから話すんでしょ?」 彼に言われた言葉と、ピアスだらけの耳が 脳の端をか
「私、自分の持ち物全部、どんな出会いだったか覚えてるよ。」 そう言って岬は、あれはいつ買ったとか、誰からもらったとか、どこで手に入れたとか、すらすらと私に教えてくれた。 全てが彼女の想い出の欠片であり、大切に残しているということがよく伝わってきた。 私はといえば、間に合わせで買った服でタンスをいっぱいにしたり、人からもらった好みじゃないプレゼントを躊躇いなく捨てる人間で。 「物を大事にできる人は、人も大事にできる。」なんてどこぞのミニマリストが主張していたけど、そんな自
「今日は髪結んでるんだ。」 仕事だったので。 「この居酒屋みたいな客層だと大変だね、 この人たちくらい気にせず飲めたら楽だよね。」 ほんとそうですね、 職場に広めちゃったら…とか考えちゃう。 「この店、入社したての頃商談行ったわ。 断られたけど。」 そうなんですね、営業さん大変だなあ。 「ここ、外見綺麗。」 ですね、 「このホテル、寝巻きよすぎて 持って帰りたかったな。」 それずっと言ってたね。 またの機会に、ですね。