third place
駅前の変な像の前ではじめて待ち合わせて、カフェに行ったあの日から早数年。
いつだって君には敵わない。
その事実はじわじわとわたしを蝕み、わたし自身を見失わせていた。
そんな日々に訣別し今年を清算するために、あの日のカフェに君をなんとか呼び出して、今日を迎えたってわけ。
サードプレイスを謳うこのカフェも、さすがに今日のわたしを落ち着かせてくれはしないみたい。
最後くらい、記憶に残るなんとかフラペチーノを飲みたかったけど、結局いつものやつに落ち着いた。
片耳だけイヤホンをつけて本を開き、君を待つ。
音楽にも物語にも没頭できるわけがなく、誰かが入店するたびに発されるバリスタの温かな「こんばんは」が、まだ来ないのかと逸る気持ちに火をつける。
会いたいのか会いたくないのか。
終えたいのか終えたくないのか。
そんなことをぐるぐる考えながら分かるはずもなく、コーヒーを一口啜った。
昔から場所に思い入れを強く感じるタイプだから、ここのカフェは特別な場所になるかも。
それは前からなんとなく考えていたところだ。
またコーヒーを飲もうとすると、人影とともに花のような懐かしい香りが鼻を掠めた。
ああ、やっぱり敵わない。
来年もここに通うことになりそうだね。
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